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原郷の森

横尾忠則 文藝春秋 2022.3.25
読書日:2022.6.30

画家の横尾忠則が死者の集う「原郷の森」にアブダクト(拉致)され、そこで過去の画家、文学者など歴史上の彼が話したい人と自由に議論した内容を記録した本。

横尾忠則のことはあまり良く知らないが、わしはときどきNHKの日曜美術館を見ることがあって、かなり前だが、そこに横尾忠則が出てきたことがあった。彼はY字路の膨大な量の連作を描いているところだった。そのあまりの量に、よく飽きないなあ、と感心したものである。そういうわけで、横尾忠則のわしの印象は、過剰、あまりに過剰、というものである。

この本も内容は過剰だ。500ページに渡って、似たような議論が延々と続いているのだから。しかし、困ったことに、正直に言うと、これはとても面白かった。わしは飽きずに読むことができた。でもきっとほとんどの人には耐えられない気がするから、お勧めはしないんだが。似たような話といっても少しずつテーマがずらされて議論が進むため、全く同じというわけではない。そのへんのところが絵画でもたくさんのバリエーションを生み出している横尾の真骨頂なのかもしれない。

で、わしはここに書かれていることはきっと本当に起こったことなんだろうな、と思った。実際には彼の頭の中で起こっている妄想なのかもしれないが、彼自身にとっては本当に起こったとしか思えないことを記録のように書いているだけのような気がした。いちおう小説ということになっているのだが、きっと単純なフィクションではないだろう。

どうも彼はプリンスホテルで宇宙人に拉致された経験があるらしいし、リアルな夢を見てそれを作品にしているらしいし、難聴で聞こえないから自分の世界に入りやすだろうし、しかもこのコロナ禍の中、どこかに出かけるわけでもないし、現実としか思えない妄想が膨らみやすい環境である。というわけで、彼にとっては、ほぼノンフィクションなのであろうと思う。

で、原郷の森で霊的な宇宙人に聞いたところによると、彼は200回も生まれ変わっていて、メソポタミアのウルトにも、中世のヨーロッパにもいたことがあるらしい。へー、生まれ変わりを信じるんだ。なんか普通な感じだ。でも、もう十分生まれ変わって、レベルも上がったようで、もうこれ以上生まれ変わらなくてもいいんだそうだ。

なんかこんなふうにグダグダと書いているだけの本を面白いと思うのはちょっと悔しいけど(なぜ?(笑))、まあ、面白かったんだからしょうがない。

そういうわけで、横尾忠則に興味が湧いたので、次は彼が病気について語った本を読んでみようかな。

画家はこんなふうに、同じテーマを飽きずに描き続けることが多い気がする。小説家が同じ話を書くとマンネリと言われるのに、画家はそれが許されるというのはちょっといいなあ、と思った。まあ、作家も同じテーマを結局は何度も飽きるまで書いているんですけどね。

★★★★★

 

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