ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

「外食の裏側」を見抜く プロの全スキル、教えます。

河岸宏和 東洋経済新報社 2014.6.1
読書日:2021.7.11

競争の厳しい外食産業でコスト削減のために行われていることを食品産業を渡り歩いたプロが教え、その見抜き方まで伝授する本。

著者は食品工場でハムを製造する仕事からはじめ、卵の工場、スーパー、コンビニなどを渡り歩いている食品に関するプロだ。この本の前にスーパーに関する本を出したようで、それが評判になって、今回の外食の本を出すことになったようだ。

著者によると、かつては外食というのはハレの行為で値段もそれなりにしたし、ワクワクするようなことだったという。しかしすっかり外食は日常化し、家で作るよりも安く済ませられるくらいで、なんらワクワク感がないという。そして、多少おいしくなくても、この値段だからこんなものかという感じで品質すら期待されていないという。

その一方、外食産業ではコスト削減のために家庭では絶対しないような事が行われており、客はその実態をまったく知らされないまま、それを口にしているという。なぜこんなことがまかり通るかというと、スーパーなどでは食品の内容を表示するJAS法などの規制が厳しく行われておりラベルを見ればある程度中身がわかるのに対して、外食の法律は主に食中毒など衛生面の法律がメインで、提供する食品に関してはなんら規制がなく、どんな材料にどんな処理をしたかを客に知らせる必要がないからだという。

では、そのような嘘つき放題の外食産業でどんなことが行われているのだろうか。

まずハンバーグなどの肉には、混ぜ物のし放題なんだそうだ。リン酸塩を混ぜると、リン酸塩は水を含んで膨らむという。牛肉に豚や鶏の肉を混ぜるのはもちろん、大豆の絞りかすなどの植物性のタンパク質をまぜる。すると色が白っぽくなり肉色にならないので着色料を入れる。味をハンバーグにするためにソースでごまかす。リン酸塩は独特の苦い味がするからわかるという。

ステーキももちろん合成肉で、いろんな部位の肉を集めて、脂肪分を注入する。これは切ってみると、繊維の方向が一方向でないからすぐに分かるという。

チーズもチーズフードという名の偽物を使っていて、それはプロセスチーズ、ナチュラルチーズを溶かして小麦、乳化剤、香料を混ぜたもの。

ご飯もその日のご飯ではなく前の日や二日前のご飯、あるいはパックご飯。

サラダはセントラルキッチンでカットしたものを出すから、数日前にカットしたものになり、レタスの切り口が赤くなるという。(レタスは金属の刃で切るのではなく手でちぎらないといけないのだそうだ)。セントラルキッチンはどうしても作ってから提供するまでに時間がかかるから、作りたてのおいしさを提供するのは難しくなる。

わしの近所はラーメン激戦区だが、あるときスープもチャーシューも全部仕入れたもので商売している店がオープンしました。が、なんと数ヶ月で撤退しました。やはり、自分のところで作っているラーメン店は繁盛しています。やはりセントラルキッチンはともかく、すべてを仕入れで済ませられるほど、今の外食は優しくはないようです。

こういう普通の話だけでなく、7年前の少し古い情報になるが、2014年時点での各大手チェーンの評価も載っているのがすごい。なんのしがらみもないからできるのだろう。どのチェーン店かは明記していないのもあるが、大体はわかる。

このなかですべてを現場で調理している大戸屋の評価がとても高いが、ご存知のように大戸屋は昨年の2020年、コロワイドに買収されてしまった。コロワイドはセントラルキッチンで効率化することを公言しているから、今後質が低下する可能性が大きい。コロワイドはいろいろなチェーンを買収しているが、質が下がって儲けが出ていない店が多いような気がするなあ。(牛角とか、かっぱ寿司とか)。大戸屋の優待を楽しみにしている株主として、わしはとても心配。

意外にすかいらーくバーミヤンの評価が高い。わしの近所のバーミヤンはぜんぜん美味しくなく、ほかに美味しい中華がたくさんあるから、めったに行かない。みんなそう思っているのか、少し前に撤退してしまった。昔からバーミヤンに満足したことがないので、この評価は不思議。でも、同じすかいらーくでもガストは残っているなあ。すかいらーくはもちろん株主。

丸亀製麺とスシローの評価は高いようだ。丸亀製麺はやはり店でうどんを打っているこだわりが奏功しているようだ。わしはじつはうどんが苦手だったのだが、丸亀製麺株主優待で通っているうちに、おいしいと思うようになった。スシローも株主だったが、とても株が上がったので、利確させていただきました。普通の客として時々行ってます。

意外にも、サイゼリア(と思われるイタリアレストランチェーン)の評価が低い。パスタを頼んだらすぐに出てきたので作りおきと断言されていたが、わしの知っている限り、サイゼリアは茹で時間が数分ですむ特殊な形状のパスタを使っていてるはずだ。作り置きじゃないと思う。わしはサイゼリアの生ハムなんかは高く評価しているのでそうとう意外。サイゼリアもいちおう株主。ここは優待はちょっと少ないけどね。

牛丼チェーンでは吉野家が良いという。これもいちおう株主(笑)。わしはなぜか松屋のカレーが好きなので、松屋も株主になってる。いつもカレーギューばかり食べてるけど(笑)。

トンカツでは和幸がいいという。和幸は本当においしいよね。和幸は定期的に、利用してるなあ。和幸は全部店で作ってるんだそうだ。和幸が上場したら速攻で買うだろうね。

しかしこうやって見ると、わしはほぼ株主優待で外食を決めてるなあ。こういうのも、考えものかもしれない。まあ、いくら株主優待でもおいしくないところには行きませんけどね。

個人の店の見分け方も書いてある。

個人の店では、店構えで決めるという。店構えには客を迎え入れて喜ばせようという店側の気概が表れるという。きちんと掃除してないとか、のれんが汚いとかはもちろんだめ。看板が壊れているとか、見えるところにダンボールやビールが積んであるとか、そういう整理整頓ができていない店もだめ。ともかく第一印象が大事だという。

なんか「孤独のグルメ」の五郎さんのように、「なんか来るなあ」っていうものがあるのかもしれないですね。めったに個人商店の店に入らないので、よくわかりませんが。五郎さんが入る前に散々チェックするのもこういうことなんですかね。

中に入ってからのチェックポイントもいろいろ書いてあるけど、でも中に入ったらさすがに注文せずに出るわけにもいかないから、そこで分かっても遅いんじゃないかと思いますけど。

でもまあ、醤油差しの口がふさがっているとか、醤油差しの下に輪っかができているとかというチェックポイントは納得できるなあ。

ともかく汚い店にうまいものはないんだそうです。

ところで、偽肉として大豆系の混ぜもののことがいろいろ書いてありましたけど、そういうまがい物を作る技術蓄積が昨今はやりの大豆ミートを日本企業が素早く開発できた理由でしょうか? わしは最近いろんな会社の大豆ミートを買ってきて、パクパク食べていますが、これはこれとして結構美味しいなあと思っています。

★★★☆☆

 

 

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