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女と男 なぜわかりあえないのか

橘玲 文春新書 2020.6.20
読書日:2020.9.12

橘玲が女と男について進化心理学の立場から身も蓋もないことを語る本。

橘玲はこれまでも進化心理学をネタに身も蓋もないことを語ってきたが、今回は女と男についてであり、たぶん進化心理学としては最も興味深いテーマのひとつであろう。

その基本的な考え方は、女も男もまずは生存が最も大切で、次に子孫を残すための生殖が大切ということである。

この観点にたつと、男の場合は精子をばらまくコストは少ないので、多くの女とセックスをするほど子孫を残せる可能性が高まる。一方、女子の場合は子供を育てるというリスクがあるので、相手を慎重に選ばざるを得ない。何しろセックスだけして、できた子供の養育を押し付けられたら最悪だ。

この男と女の戦略の違いが、ほぼすべての男と女の分かり合えない理由になる。

例えば、生殖という観点からみると、相手の魅力度というのは子供ができる可能性にかかっているから、男からみると20代前半の若い女性がもっとも魅力的になる。これは男性の年齢に関係なくそうなんだそうだ。男性から見ると、35歳以上の女性は存在しないも同然、なんだそうだ。一方、女性は多少の上下はあるが、だいたい同じ年代の男を好む。しかし例外があって、男が大金持ちの場合は、年が離れていてもOKなんだそうだ。

そりゃそうだ。なんとも身も蓋もない結果である。

そして、女性も自分の市場価値は十分わかっていて、エロス資産をたくさん持っていると自覚している20代前半の女性がもっとも幸福を感じているのだそうだ。

(ちなみにサルでは、子供を産んだことのある品質保証済みの熟女が大人気で、若いメスはあまり人気がないんだそうだ)

さらに興味深いのは、男性と女性で萌える要素がことなることだ。

男性は単純に淫乱な女性と結ばれるポルノトピア(ポルノのユートピア)を夢見る。これはまあ、理解できる。例えば、アダルトビデオでも、余計なストーリーは少ない方がいいということだ。

一方で、女性はロマンス小説のようなストーリーの状況(ロマントピア)に萌える。

ロマンス小説の典型的なストーリーは、男同士がひとりの女性を争って勝った方が女性を得る、というものだ。女性から見ると、男性が自分をめぐって争うという状況であり、そこに萌えるのだという。そして、最も強い男が最終的に自分に選ぶ、つまり自分に屈することが最高のハッピーエンドなのだそうだ。つまり自分が最も高く売れる状況に萌えるわけだ。

なるほどね。これは言われてみないと、男にとってはなかなか理解できないかもしれない。

そのほか、浮気をしたときに男女で怒るところが違うとか、もてるかどうかは見た目がほぼ全てで、それも左右対称かどうかにほぼかかっているとか、ゲイとレズビアンで付き合い方が違うとか、興味深い内容が満載だ。さすがは橘玲だなあ、と感心する。

この本を読むと、男はセックスに熱心で、機会があればほぼするみたいな印象を得るかもしれないけど、わしが思うに、現代の男も女に劣らずセックスにはそれなりに慎重なのではないだろうか。なにしろ、子供ができたら、養育費が膨大になるのだ。リスク満載じゃない?

最後にひとつだけ。女性は身体と頭は分離しているのだという。つまり身体は相手を受け入れていても、頭では受け入れていないことがある。なので、レイプで男性が、「身体は反応していたじゃないか(だから相手も望んでいた)」と主張するのは間違いということらしい。これについては、女性は自分の大切な生殖器を傷つけないために、頭では拒絶してもとりあえず身体は性器を守るために濡れるという反応をする、というのが有力なんだそうだ。だから相手も望んでいたというのは間違いということだ。

★★★★☆

 


女と男 なぜわかりあえないのか (文春新書)

 

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