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沖縄から貧困がなくならない本当の理由

樋口耕太郎 光文社新書 2020.6.30
読書日:2020.8.31

沖縄から本当に貧困がなくならない理由は、日本の社会の悪いところが最も濃密につまったところだからと主張する本。

日本は同調圧力の高い社会だと思っていたが、その中でもとびきりに高い地域は沖縄らしい。沖縄にはひと昔前の日本の田舎の特徴が濃厚に残っている。日本社会のこういったところをフィールドリサーチしたい人は、いますぐに沖縄に行って研究すべきだ。何しろ著者によると、さすがの沖縄も最近、変わりつつあるようだから、もう時間がないかもしれない。

ともかく、沖縄では何よりタブーなのは目立つことなのだそうだ。例えば車に乗ってクラクションを鳴らすくらいでも、アウトになるという。沖縄のひとがクラクションを鳴らさないのは優しいからではなく、他人に対して強く出ると、それがやがてみんなの話題になり、人が離れていくからだそうだ。

当然ながらリーダーシップをとって人に指図するのも嫌われるもとになる。したがって、沖縄の人は昇進を嫌うのだという。リーダーシップを発揮すると、どんどん自分から人が離れていくからだ。なので無理に昇進させると本当に会社を辞めてしまうこともあるらしい。

そういうわけで、みんなと同じことをするのが無難となって、例えば定番の商品をずっと買い続けるということが起きる。オリオンビール金ちゃんヌードルなどが沖縄では異常に高いシェアをとる。そして商品を買うとき、食事や宴会をするときには人間関係が優先される。飲み会は知人の店以外は選択肢が存在しないそうだ。

このような状況では、沖縄の企業に生産性を上げようとする意識がまったく働かない。なにもしなくてもずっと買い続けてくれるのだから。さらには、従業員は昇進、昇給を望まないから、利益を確保したいと思ったら、給料を安いままにしておけば簡単に利益が上がる。利益を得るには生産性を上げるのが常道だが、そうすると従業員に対するリーダーシップが必要になり、このやり方は沖縄では向かないので、誰もやらない。

この結果、沖縄の地元企業は、沖縄では無敵だが、沖縄以外ではまったく競争力がないという状況になる。

さらに沖縄には国から数千億円単位の補助金が毎年投入されているが、このような補助金は地元企業の経営者を潤しているが、沖縄の一般の人にはいきわたらない。これでお金持ちがお金を使ってくれればいいのだが、お金持ちも目立つことを嫌うため、そんなに消費もしないようだ。

さらに子供もやる気のある生徒は仲間外れにされるという。その結果、やる気をなくすか、沖縄以外の大学に進学し、多くは帰ってこない。

こうして沖縄の貧困は続いていくのである。

著者も言っているが、これは外国から見た日本の状況にそのままである。日本は外国から見てガラパゴス化しており、生産性は上がらず、貧乏になり続けている。

どうすればいいのだろうか。

この点に関しては、著者もこれが解決策だというものはないようだ。ただ、著者は沖縄の人の自尊心の低さを問題にしていて、その人が関心をもっていることにこちらから関心を寄せてあげることで、自尊心を高めることができ、幸福になれると強調している。

そうすると、日本全体でも、収入とかGDPとかにこだわらず、幸福に暮らせるように持っていくのが良いのだろうか? そういう意味では日本はなんとなくそういう方向に進んでいるという気がする。

だが、最近のユニセフの国際的な評価で、子供の幸福度の順位が日本は38ヶ国中20位だった。しかし精神的な幸福度は37位ととても低い。たぶん大人も同じ傾向だろう。やっぱり日本人は自尊心が低いのかもしれない。

これをやればいいというひとつの答えがあるわけではないだろうが、次世代の日本人がもっと幸福であることを祈る。そもそもお気軽な気質の国民なので、楽しくやっていけるはずなんだがなあ。

★★★☆☆


沖縄から貧困がなくならない本当の理由 (光文社新書)

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