坂本貴志 講談社 2022.8.20
読書日:2024.1.28
定年後、収入は大幅に減るが同時に支出も減るため生活には困らず、月に数万〜10万円程度の追加収入があれば趣味をおおいに楽しむことができ、ストレスがほぼないため幸福な生活を送る人が大半だと報告する本。
定年後にもらえる年金額を知って、あまりの少なさに愕然とし、このままでは生活できないと苦悩する人がいる。だが、それは養うべき家族を抱えている現状とくらべているからで、定年後は子供が独立し、教育費などがかからなくなるため、必要な生活費が大幅に減少するから心配ないのだという。とくにすでに自宅を確保している人にとってはそうである。
そして大半のひとは、それに加えて小さな仕事をする。この仕事は生活のためにやらなくてはいけないというものではないので、なにより負担が少ない小さな仕事を選択することが多い。その負担とは身体的にも精神的にも負担が少ないということであって、ほぼストレスフリーの仕事である。責任者という立場から解放される仕事である。
そもそも責任をともなう仕事は選択されない。自動車の運転に関する仕事ですらメインの運転手ではなくあくまで補助の仕事をするという事例が報告されている。責任をとるような仕事は本当にまったくしないのである。
そうすると、やる仕事は短時間の軽作業の仕事ということになるが、これらはほとんどエッセンシャルワーカーの仕事であり、社会になくてはならない仕事である。このような仕事をすると、直接、他の人の役に立っているという実感を得ることができる。
さらに、高齢者はたくさんいるため、このような小さな仕事の積み重ねでも、GDPに与える影響は小さくないという。
高齢化によって個人の能力が減っていくのは仕方がないが、自分のできる範囲の小さな仕事をすることで、ほとんどのひとは充実した生活を送れているようだ。
少子高齢化で日本がどうなるかという心配はあるが、このような事例を見る限り、高齢者本人の人生はとてもよろしいようで、もしかしたらこれは世界に誇れる状況なのかもしれないなあ、と思った。
わしも遠からずお仲間になりますので、ぜひ充実した老後を送りたいものです。すでに会社では責任というものから解放された状態で、こういうのを嫌がるひともいるかもしれないけど、何の責任もない状態は本当にストレスがない世界で、わしは気に入っています。これがずっと続くなら歓迎したいなあ。
明るい老後の姿を実証的に示した本書の価値はとても高いと思う。
★★★★★