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超訳 ケインズ「一般理論」

ジョン・メイナード・ケインズ 超訳山形浩生 東洋経済新報社 2021.3.5
読書日:2021.5.5

山形浩生ケインズの「一般理論」を大幅に圧縮、ポイントをまとめて読みやすくした本。

わしはだいたい新刊書ばかりを読む方で、あまり古典を読まないのだが、やはりそれはいけないのではないか、とふと思い、とりあえずケインズの「雇用、利子および貨幣の一般理論」を読もうと思ったのです。今年の三月のことです。

最近、新訳もいろいろ出ているので、そんなに読みにくくはないであろうと楽観していました。珍しく図書館ではなく、アマゾンで購入し、ダウンロードしました。

で、読み始めたのですが、最初の序章で、挫折してしまったのです。だってさあ、文章はこんな具合なんですから。

「要約しよう。古典派理論の第二公準には二つの点で問題がある。一つは労働者の現実の行動に関係している。貨幣賃金は変わらず物価だけが上昇することによって実質賃金が下落した場合、そのせいで、その賃金の下で買い手を待っている有効労働供給量が物価上昇以前の実際の雇用量を下回ることは一般にはないと言ってよい。そのようなことがありうると考えるのは、現行賃金で働く意思をもっているにもかかわらず現在失業を余儀なくされている労働者が、生計費がわずかでも上昇したら一人残らず労働供給を引き揚げる、と考えるに等しい。」

あー、良くわかりません(苦笑)。

読めないことはないけれど、ひとつひとつの文章を理解するのにとても時間がかかってしまう。こんな文章が延々と続くと思うと、さすがに萎えてしまう。

そういうわけで、本物の方を読むのはやめて、とりあえず山形浩生超訳版を読もうと思ったわけです。長い前置きだった。

さて、山形版を読み始めたが、序章はやっぱりよくわからない文が多かった(苦笑)。超訳でも分かりにくいです。でも、こっちは一章あたり数ページだからとりあえず我慢できるし、章ごとにポイントも書いてあるから分かったことにして、次々読んでいくとあら不思議、あとの方は特に問題もなくすらすら読めるではありませんか。

どうも読みにくいのは最初の方だけらしい、ということが分かりました。

なんで読みにくいかと言うと、わしが思うに、最初の方は従来の古典経済学への反論になっていて、わしはそもそも古典の方がよく分かっていないから、なぜこんな議論しているのかもよくわからないし、どこがポイントなのかもよく分からないからでしょう。

だから現代のひとは、最初の方は、山形浩生が書いてくれたポイントだけでも理解していればいいのではないかと思います。

一方、後半の持論を展開しているところは、わしがいま持っている知識と反することはないので、まあ、当たり前として読めたということでしょう。

でもやっぱり、ケインズというのは、分からない人は分からないんじゃないかと思いますね。どこが分かりづらいかと言うと、たぶんそれはマクロ経済が分からないというのと同じことだと思います。

国のマクロ経済が、普通の家庭や企業の業績などのミクロ経済とはどう違うということを理解するのに、わしも紆余曲折がありましたからね。わしはMMT(現代貨幣理論)を学んでようやくマクロ経済の全てがつながったと感じました。

ともかく、いろいろ直感に反するので、マクロ経済はわかりにくい。わしは自分の周りにいる人間で、マクロ経済を議論できる人はいないと断言できます。それどころか、日本にどのくらいの比率で理解している人がいるか、それすらもまったく心もとないのですが、なんとなく一万人にひとりいればいいほうかもしれないなあ、と思います。(こんなことだから財務省のむちゃくちゃな論理に騙される)。

さて、この本は後半が山形による解説になっているのですが、ここでケインズがいい意味でいい加減に書いていて、つまりそれは精緻な経済体系を作ることが目的ではなく、とりあえず、使えるものを提供しているのだという意見に激しく共感を覚えるしだいです。そして、これまでと違う状況が現れても、やっぱり一般理論は使える学問であり続けるだろう、というのも、そのとおりかなという気がしますね。

わしの方は、山形版の超訳でほぼ満足してしまって、まあ、このままではきっと本物の方は読まないんじゃないかしら。せっかく買ったのにね(苦笑)。

ともかくケインズ個人に興味が湧いたので、よい評伝があったら読んでみようかしら。

★★★★★

 


超訳 ケインズ『一般理論』

 

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