「どうすれば日本人の賃金は上がるのか」で野口悠紀雄は日本人の賃金が上がらず、しかも最近の円安がその賃金の下落を加速しているとして嘆いているが、やっぱりわしは円安に賛成である。円安に賛成なことはここに書いた。
バブル崩壊以降、日本の企業は30年間に渡って日本国内に投資してこなかった。その代わり、海外に投資している。その結果が、経常収支の所得収支の黒字になって現れている。つまり、日本で作って輸出するよりは、海外の現地に投資していたということである。
なぜこんなことをしていたかというと、そのほうが儲かったから、としか言いようがない。つまり、端的に円が高すぎたのである。円が高すぎたから、日本で作っていたのでは儲からないから、そうしていたのだ。
ところが、いま、日本企業の国内への投資意欲はものすごく強い。今年度の日本企業の投資は昨年の25%増しの30兆円だという。たぶん、もっと行くんじゃないだろうか。
これは、またしても端的に、日本に投資をしたほうが儲かるようになったからである。これで、日本の機械は最新になり、非常に生産性が上がるだろう。望むところである。つまり、これが円安の効果ということになる。
国内投資が伸びるもうひとつの理由は、グローバル化の呪縛が解けたからである。ウクライナ戦争のお陰で、世界は再ブロック化し、サプライチェーンも再構築することなった。もう中国には投資することなど考えられないのである。
一方、ウクライナ戦争で意外に弱かったというのが、米国と英国の経済である。こんなに経済が弱いとはびっくりである。これは米国も英国も、国内に供給能力が著しく欠けているからとしか言いようがない。つまり、国内の製造業が弱すぎて、海外からの供給が欠けた瞬間に経済が回らなくなったのである。グローバル化が行き過ぎたのだ。
日本はどうだろうか。
日本のインフレが米欧に比べて非常に低いのは、日本の供給力が高いからである。値上げ分は原材料費の上昇分に限られている。供給過剰な現実は変わらないから、インフレはそれ以上にならないのである。ここに設備投資ががーんと行われると、効率がアップして、日本にとって悪いことはなにもないのである。
日本はグローバル化に遅れた、生産性を上げるためにアメリカのようにどんどん製造をアウトソースするファブレス化を進めなければいけない、と言われてきたが、それは間違いだったのである。
というわけで、製造業はまあなんとかなりそうだ。ここはぜひ、政府は、大学等の研究力を回復させるように投資を行ってほしいものである。いま、ここが一番日本の弱いところなのだから。
今後の世界経済では、当面、金融やITのようなバーチャルなものよりも実物経済のほうが重要になるだろう。日本に追い風が吹いてきている。
懸念があるとすれば、欧州のみならずアメリカの経済が予想外に弱そうなことだろうか。この辺がちょっと心配なので、FRBには早々に利率を引き下げてもらいたいものである。
2023年は日本にいい年になると信じたい。まあ、御存知の通り、わしはずっと楽観論ばかり言っているんですがね(笑)。