ニーアル・ファーガソン 訳・仙名紀 早川書房 2015.10.25
読書日:2020.5.24
歴史家のニーアル・ファーガソンが、マネーがどのように進化してきたのかを人類の大きなスパンで振り返るという本。
最近、歴史家が重要になってきたようだ。例えば、サピエンス全史のハラリなどが世界に衝撃を与えたことが思い浮かぶ。ニーアル・ファーガソンが重要なのは、この本にある通り、金融史に詳しく、資本主義を論じるという立場にあるからだ。本書ももともとは2009年の出版なのに、6年たってようやく翻訳されているのは、やはりファーガソンの存在を無視できなくなったからだろう。
というわけで、ファーガソンはマネーに重要な進化が起きたタイミングをとらえて解説している。
そもそもマネーがない世界から始まって(インカにはマネーがなくて、スペイン人が金や銀を欲しがるのを不思議がったそうだ)、メソポタミアで生まれた初めてのマネー(借金をしたことを書いたレンガのトークン)、信用や債権、株式が生まれて進化していった様子を描いている。
残念なことに、わしはこの本に書かれたほとんどのことを知っていたので、あまり面白く読めなかった。書かれた時期が時期だけに、リーマンショックについてかなりページを割いている。一方、MMTのような最新の経済学については全く言及はない。
参考になったのは、19世紀終盤の第1次グローバリゼーションの話かな。この時、世界はあまりに経済的に緊密に結びついていたので、もう戦争は起きないと考えられていたという。とくにイギリスとドイツは緊密だった。だから、サラエボでオーストリア皇太子が殺害されたときも、市場がその意味を理解するのに2か月もかかったのだという。そして、イギリスとドイツの結びつきはあっさりと消えてなくなった。
いま、中国と米国が緊密に結びつく第2次グローバリゼーションが起きている。しかし、グローバリゼーションの結びつきは簡単に切れてしまうことは、第1次世界大戦で見たとおりである。いまコロナショックのあとで、米中の激突が激しくなっている。この2大国の展開がどうなるのだろうか。
しかし、ジョン・ローのミシシッピ株式会社の話は、いろんな本にたびたび紹介される話ではあるが、何回聞いても面白い。結局、失敗してしまったが、別の着地点もあったのではないか、という気になる。
★★★☆☆