宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

加藤 文元/著 -- KADOKAWA -- 2019.4
読書日:2019年7月17日

数年前に不思議な数学の論文が出されて、査読に入っているという話を聞いたことがありましたが、どうもこれのことらしい。その時も宇宙と宇宙をつなぐなどという言葉が躍っていて、これはいったいどういう理論?と不思議に思っていました。

この本を一読するに、まあ、確かに宇宙と宇宙をつないでいることには変わりはありませんが、特に不自然な感じもせず、ちょっとがっかり(笑)。だって名前、宇宙際タイヒミュラー理論からして、よほどぶっ飛んだ理論かと期待してしまうではないですか。でも本にも書いてありますが、別にパラレルワールドをつなぐ話ではありません。

とはいえ、こういう発想は聞いたことがないので、確かに画期的な発想なのでしょう。

かいつまんで言うと、この世は足し算と掛け算が固く結びついていますが(A+A=2Aみたいな)、この固い結びつきによって解析が難しくなっている分野があります。例えば、素数というのは掛け算の世界の概念ですが、普通にやると足し算の話が入ってきて、掛け算の部分だけを取り出すのは難しい。そこで、

(1)足し算だけが成り立つ世界と掛け算だけが成り立つ世界を構築する。
(2)足し算の世界と掛け算の世界が通信をして、その通信でのみお互いの世界が結びつくとする。
(3)通信をする内容は、対称性の情報だけをやり取りする。
(4)通信の結果、どのくらい誤差が生じるかは計算で出てくる。この結果、足し算の世界と掛け算の世界が誤差の分だけの差がある不等式で評価できる。
(5)誤差を小さくできるように対称性を選べば(対称性の制限を多くする)、誤差は小さくなり、二つの世界はほぼつながる。

この結果、何が分かるかというと、例えば「ABC予想」という、数の足し算と掛け算の不等式で表現される式が証明できるんだそうだ。ABC予想が証明されると、いろんなことがすぐに証明できることになっている非常に重要な予想らしい。(現在1万ページあるというフェルマーの最終定理の証明が、1ページで終わるらしい。)

ここでは足し算の世界と掛け算の世界で考えましたが、この発想はあらゆる固く結びついた関係をいったん解消して、それぞれ別々に考えた後、再度結びつけて再構築する場合に、非常に役に立つそうで、そのへんが画期的なようです。

このIUT理論自体については意外に分量が少なくて、そもそも数学者って何をやってるの?みたいな話が半分以上あって、それはそれで興味深いけど、ちょっとかったるいです。

でもまあ、この画期的な理論の概要、というか発想を、これだけ簡単に説明できるとは、まったく驚きで、IUT理論(宇宙際タイヒミュラー理論)を構築した望月新一教授と毎週議論、というか研究報告を受けてきた著者ならではです。この本は世界中で翻訳されるんじゃないでしょうか。誰かが翻訳すればですが。

ちなみに、論文の査読は、今現在もまだ、絶賛続行中のようです。(笑) いったい何年かかるんでしょうか?

★★★★★


宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃 (角川学芸出版単行本)

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