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文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る

松原隆彦 山と渓谷社 2019.3.1
読書日:2020.5.10

宇宙物理学者の松原隆彦が物理学の世界を分かりやすく説明する本。だから世界の仕組みと言っても、当然ながら社会や経済の仕組みのことではありません。哲学や倫理学とは多少かかわってくるかもしれない。なぜなら、量子力学やAIを通して、人間の意識が絡んでくるからだ。

文系を対象にしているのであるから、もともと物理学についてそれなりに知っている人にとっては、目新しいことは少ない。とはいえ、松原氏の視野は広いから、そうだったっけ?ということもあった。

例えば、地球の自転が安定しているのは、大きな月があるからだと言われている。そういわれているのは知ってるけど、あらためてそう言われると、それはなんでだっけ、と少し考え込んでしまった。

でも、この本で一番大切なことは、物理学はどんなふうに進んでいくかということを示していることだろう。わしはこの本を高校のときに読めればよかったと思った。なぜなら、高校のときに、ずっと物理学で悩んでいたことがあったのだ。

具体的に言うと、ニュートンの第2法則であるF=ma(力Fは加速度aと質量mの積)という式がある。この式が教科書に何の説明もなく出てきて、わしは戸惑った。で、この式はどこから出てきたんですか?というのがわしの質問で、教科書にはなにも説明がなかったのである。しばらく考えているうちに先生に質問の機会を逸してしまい、そのままずっと疑問のままになってしまった。

理解したのは、ようやく高校が終わるころで、ある日これは実験式だということにやっと気が付いたのである。つまり観察により得られた式で、どうしてそうなっているかは考えていない式なのである。物理学の公式はすべて「仮説」だということにやっと気が付いたのだ。仮説なので、もっといい説明がつけばそれに置き換えられるのである。そういう学問なのだ。

この本によれば、ニュートン万有引力があると説明したけれど、なぜ万有引力が発生するかは説明しないと言ったという。その説明はアインシュタインに引き継がれたのである。

物理とはこういうふうに仮説が進化していく学問であるということを、物理の授業の最初に教えてくれれば、高校が終わるまで悩むこともなかったのに、とわしはこの本を読んで思ったのである。もっとも、すべての科学はそうだと言える。それが科学の進め方なのである。

こういうことを思い出しながら読んだけど、でも、なぜかわしが最も知りたいと思った「量子もつれ」には説明がひとつもなかった。量子力学の不思議について書きすぎて、紙幅が尽きてしまったのだろうか。

しかし代わりと言ってはなんだが、多世界や意識については説明があった。

まあ、この本は文系向けと銘打ってるけど、たぶん文系は手に取らず、読むのは理系ばかりなのではという気がする。

★★★☆☆ 


文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る

 

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