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生物に世界はどう見えるか 感覚と意識の階層進化

実重重実(さねしげ・しげざね) 新曜社 2019.12.1
読書日:2020.3.30

上から読んでも実重重実、下から読んでも実重重実というふざけた名前の著者だが、どうもこれは本名らしい。親はもしかしたら相当変わっている人だったのかしら。まるで生物の左右対称を名前が体現しているかのようである。

著者は農林水産省出身で、あらゆる生物の行政を担ってきたという。その著者は団まりなという生物学者に師事し、生命の進化について感覚と意識が階層進化してきたという新しい考えを得、その考え方を広めようというのがこの本の趣旨である。

感覚と意識の階層進化とはどういう考え方かというと、最初に誕生した生命にすでに感覚および意識の種というものが備わっており、それが発展していまの人間のような高度な意識に進化したという考え方である。これは人間のような高度に進化して初めて意識は生まれるという通常の考え方とは全く異なる。

これは非常にチャレンジングな考え方だ。そのせいか後の方の高度な動物の感覚について述べたところよりも、非常に単純な細菌や単細胞生物について述べた最初の部分が一番面白い。本当に単細胞生物に意識の種のようなものはあるのだろうか。

この本で出てくる生物で一番小さなものは大腸菌だが、話はもっと大きな単細胞生物であるゾウリムシから始まる。ゾウリムシはこういう進化系の本にはよく出てくる生物で、たぶんそれは単細胞なのにいろんな機能を持った部位が発達していて、多彩な活動ができるからだろう。単細胞生物の完成形と言える。すごい速度で移動したり、敵を攻撃したり、生殖行動をしたり、光すらも感じたりしている。なにかもう、一匹の動物そのものという感じなのだ。たぶん観察していると、意識があるに違いないと思えるのではないか。

感覚と意識の階層進化といっても、著者は慎重に「意識」という言い方を避けている。意識といったとたんに、物議を醸すことになるからだろう。著者の表現を借りれば、それは「主体的な認識」ということになる。つまり積極的に周りの状況を感覚を通して認識し、それを一時的に記憶し、そして次の行動を決めることを意味している。

小さな細菌である大腸菌にも、周りの空間的な状況を感じ取る感覚があるだけでなく、メモリを持っているという。そして次の行動を決めるためには時間の感覚を持っていなくてはいけないが、単細胞生物でも複数の方法で時間を認識しているようだ。

この「主体的な認識」が意識の種のようなものなのだろう。これがどのようになると意識と言えるのだろうか。わしの考えでは、最初はほとんど自動機械のような反応しかできないものが、やがて自分はどうしてこんなことをやっているのか、それを認識しようとすると、それが意識になるのではないだろうか。つまり主体的な認識のメタ化である。自分自身を主体的に認識するのである。

著者は世界最初に誕生した生命であるLUCAについて思いをめぐらせ、LUCAも少なくとも匂いを感じる感覚(化学物質を感じる感覚)を持っていたはずだという。生きていくうえで必要な分子を体内に取り込む必要があるからだ。

最初の世界共通祖先LUCAにも意識の種みたいなものがすでにあるとすると、意識という行為のソフトウェアは意外に単純な仕組みでできているのかもしれない。

★★★★☆

 


生物に世界はどう見えるかー感覚と意識の階層進化

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