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失敗のしようがない 華僑の起業ノート

大城太 日本実業出版社 2015年5月1日
読書日:2018/11/24

華僑のずるゆる仕事術の大城太さんが2015年に出した、華僑の起業の方法を述べたもの。やはり、華僑に学ぶなら、企業内の出世なんかじゃなくて、起業の方法でしょう。そしてここには、思った以上に重要なことが書かれていて、読んだ甲斐があったと思いました。

この本には、華僑らしい考え方や語録のようなものもたくさん書かれていますが、第2章の「企業1年で結果を出す華僑流ビジネスのスタートアップ」というところが最も大切。

ここで、スタートアップの最初から、「お金を出す人」、「アイディアを出す人(経営する人)」、「作業をする人」を別の人で用意して、トライアングルを作れ、というのです。

兼任はダメです。なぜなら、兼任すると妥協が入ってしまうからです。

たとえば、最初は人件費を抑えるために、社長一人の会社にして、アイディアを出す社長が自ら働くということがよくありますが、それが良くないといいます。

アイディアを出すとしても、自分がやりたくないことはアイディアから外してしまいます。たとえ、それが必要なことで、最初はやっていても、結局は面倒になってやめてしまう。こうして、成長が大幅に遅れてしまうというのです。

作業する人とお金を出す人が一緒で、経営者を別に出す場合は、職人的な人が自分の技術や才能を売るパターンで、このパターンはその人自身が成長の限界になってしまい、大きくなれないと言います。

お金を出す人とアイディアを出す人が一緒の場合は、お金重視なら目の前のお金を取りに行き、先が続かず、アイディア重視ならそれを実現するための資金が続かなかったりとなり、うまくいかないと言います。

なので、経営(アイディアを出す人)をやりたいのなら、自己資金で立ち上げることをせず、必ず出資してくれる人を見つけ、アルバイトでもいいから作業する人を雇えというのです。

まるで民主主義の3権分立みたいですね。そして、これは法人化するかどうかは別として、会社組織そのものですね。

わしがいいと思ったのは、最初からこの構造にしておけば、事業が発展したときにすぐに大きくしやすいし、また別の事業プランを思いついた時も立ち上げやすいということです。つまり拡張性がとても高いとというところですね。

どうもこれが華僑ビジネスの基本形みたいで、華僑のやり方は半端なく強力だと思いました。

うちの近所に中国人の経営する中華料理屋がオープンしました。店の中は掃除とか物の整理とかがほとんどされてなくて、とても客が中で食べるようなものではなかったのですが、それは宅配専用のお店でした。だからお店は汚くてもいいのですね。

そして、この店で料理を作っている人も配達している人も、たぶん雇われているだけです。ときどき太った中年の男が来て、ああだこうだと議論している様子が見られます。たぶんこの人がアイディアを出す人なんでしょう。お金を出した人は分かりません。

持ち帰りもやってるんですが、あまりに日本の店と異なる異質な雰囲気に、日本人はほとんど入らないのですが、宅配の方はすでに客もついているらしく、料理をしてはバイクで配達しています。

この店が持つかどうかはよくわからないのですが、華僑の方式でやっているのだとすると、意外に持つんじゃないかという気がします。まあ、スパスパ店の中でたばこを吸ってる時点で、わしはここで買う気はありませんが。

ところで、著者の大城太はこんなすごい本も出しているのに、なんで「ずるゆる」シリーズを続けているんでしょうか。たぶん、日本人読者のほとんどは、この起業の部分に反応せず、華僑らしいお言葉の部分のみに反応したんじゃないでしょうか。なんか残念。

★★★★★


失敗のしようがない 華僑の起業ノート

 

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