大城 太 日経BP社 2017年8月31日
読んだ日:2018.11.17
華僑の考え方って面白いなあ、と思わせてくれる本。
最短で金持ちにならなければならない宿命をもつ彼らの手法、というか考え方が面白い。
例えば、
・生産性を考えて、やらなくてもいいことをまず考える。
・彼らが「できる」と言ったときには、自分という個人ができるという意味ではなくて、自分の人脈全体を使ってできると判断している。
・いくつもの事業を並行的に進めて、うまくいったものを残す。(なので、突然あっさりやめるものも出てくるので、やめた方に関わっていた人からは、華僑はすぐにやめて辛抱がないと思われる)。
などといったことが出てくる。
事業の立ち上がりでは、まずは自分を利用してもらう、人が面倒と思うことを積極的に行う(そうすれば有利な位置につける)という。まずはギブからはじめるとわけで、これはなかなか実践的だと思う。何か議論が発生すると、相手を勝たせるとかも実践的。
それに人まねを照れないという特性がある。なにしろ、たくさんの人が試して成功したものなのだから、そのモデルをそのまままねした方が早いに決まっている、と考える。なるほどー、中国のパクリ文化は深いところに根差していたんだ。
それだけではなく、目指す人がいたら、その人の内面にまで食い込んで、まねしてしまう。常に、あのひとならこんな時はどうするだろうかと考えて、本当になりきってしまう。
同じ理由で、歴史を学ぶことも重視する。歴史は人間が犯してきた失敗や成功の集積だからだ。過去の歴史から学ぶのが最も効率的と考えるのだ。
意外に思えるのは、自分よりも人を立てる傾向が高くて、自分は目立たないようにするということだ。だからすごくできるのに、ちょっと抜けてる見えるのだという。これは余計な妬みを招かず、できると思わせないので、他の人に無駄に利用されることもなく、効率的という。ともかく敵を作るくらい無駄なことはないのだ。
そして感心するのは、成功したらなるべく多くの人(といっても同胞)を助けようとすることだ。意外に自分勝手ではなく公共心が高い、というか同胞が栄えることが最高のリスクヘッジと考えているのかもしれないけど。そしてどうも国という存在は全く信用していないようだ。
各章の最後にずるゆるマスターという人が出てきて、悩んでいる人にアドバイスをするというコラムが挟んであるんだけど、これがいまいち。状況が、すべて会社、しかも大企業の中の話になっている。
たぶん、これを読む人はほとんど日本人の会社員ということで、会社の中なら華僑はどうするかという話にもっていってるんだろうけど、私は会社員人生も終わりに近づいているので、何の参考にもならない。華僑ってやっぱり自営業で最大限にその特性が発揮できると思うので、そういう話が聞きたいなあ。
著者の他の本にはそのようなことも書いてあるようなので、そちらを読んでみたいと思います。
★★★★☆