川添愛 東京大学出版会 2021.7.21
読書日:2021.1.20
プロレスオタクの言語学者・川添愛が、何でもありの格闘ルールで描く言語学エッセイ。
東京大学出版会が季刊で出している宣伝雑誌UP(ゆーぴー)で連載されたものだが、まあ、こういうところじゃないと言語学エッセイなどというものは成立しないのかもしれない。
副題の「絶対に押すなよ」というのは、ダチョウ倶楽部の熱湯風呂というコントで、上島竜兵がバスタブの上で放つ言葉だが、その意味は、「押せ!」である。そういうわけで、言ってることと本当の意味が異なっている例として出てくる。AIにこれを理解させようとしたら、いろんな微妙な状況に応じた意味合いを理解できるようにしなければならず、一般化したルール作りはほぼ不可能である。
などという、言語学者が気になる細かいところが延々と出てくるわけ。
ユーミンの「恋人”が”サンタクロース」はなぜ「恋人”は”サンタクロース」ではないのか、というところでは、日本語で必ず問題になる「は/が」問題が語られるが、やっぱりすっきり説明できないようだ。ふーん。ちなみにわしも「恋人は」と間違って覚えていました。
言語学者を名乗ると、世間一般からいろいろ誤った認識をされるようで、もっとも多い誤解は、外国語が得意だろう、というものだそうだ。それは言語学者というものを誤解しているのだという。
言語学者というのは、言語がどのように機能しているのか(たぶん脳のなかで)、さぐるような人のことらしい。チョムスキーの生成文法理論みたいな? だから、言い間違いしやすい表現や、どっちとも取れる表現なんかに敏感だったりするが、けっして外国語がすらすら習得できるというわけではないという。
とくに著者の場合は、専門は日本語だそうで、そりゃ外国語は無理だよね、という感じなのですが、なぜかチェコ語の習得にハマってしまったりするようです。
言語関係の話は、なんかちょっと刺さる部分がある。やっぱり自分自身、普段使っている言語というものに違和感を感じることがあるからだろうか。
うーん、この言語関係の知識や発想がわしに必要とはあまり思えないけど、ときどき意識して読んでみるのもいいかも、と思いました。とりあえずRound 2をお待ちしています。
★★★☆☆