左巻健男 ダイヤモンド社 2021/2/17
読書日:2021.5.19
世界史に化学が果たしたエピソードを述べた本。
これはある意味、とても賢い視点だ。なにしろ人間が火を使ったときから、人間の暮らしや歴史と化学はまったく途切れることなくつながっているから、ある意味どんなふうにも歴史の断片を切り取れる。
しかもこの本では物理も生物もその現象を化学現象として取り扱っているから、もうなんでもありだ。
学問的な内容は、そこそこ読者の好奇心を満足させるレベルでやめて、難しいことは述べていないのだが、その加減が絶妙だ。
そしてもちろん歴史的なエピソードも適度にブレンドしていて、化学のことをよく知っているひとも、この点は知らないことが多いだろうから、とりあえず何ページか読むと、新知識に出会えるようなあんばいになっている。
しかも、最近の本もよく引用していて、作者は知識を油断なくアップデートしていることが分かる。
もちろん個人的な経験をスパイスとして加えることも忘れていない。
調べてみると、この人は一般書を多数書いていて、その辺の加減はこうした経験から得られたものなんだろう。たぶん、同じような知識を、視点を切り替えることで何度も使っているんじゃないだろうか。
知識の二毛作、三毛作を実践しているわけで、しかもその多数の著書のうち、いくつかは本書のようによく売れているようだ。
いや、こういうふうにして、おなじような著作を多数出して、著作権もたくさん持っていて、それは子孫に財産として50年間受け継がれるわけで、たいへん偉いなあと思います。
内容ですが、上記のようなところに感心はしましたが、わしには知っていることが多くて、少々退屈でした。でもまあ、いちおう全部に目を通せられるくらいには楽しめましたよ。
★★★☆☆