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生殖細胞の遺伝子編集の倫理について考える コードブレーカーを読んで考えたこと

コードブレーカーでは、中国の賀建奎(フー・ジェンクイ)がクリスパー・キャス9の技術を使って受精卵のゲノムを編集して、双子の赤ちゃんを誕生させた事件が登場する。

このときの遺伝子操作の名目は、この赤ちゃんのHIVウイルスへの感染を予防する、ということだった。実際にはゲノム編集をしなくても目的は達成できるので(受精卵を選ぶときに、その不利となる遺伝子を含まない受精卵を選択できるから)、たちまちスキャンダルになり、倫理的な手続きをきちんと取らなかった賀建奎は後に有罪判決を受ける。

しかし、この事件は、受精卵に対するゲノム編集の倫理問題を世界に突きつけることになった。コードブレーカーの主人公のダウドナもこの倫理問題に取り組むことになる。

問題は次の2点に集約されるのではないかと思われる。

(1)受精卵のゲノム編集は許されるのか。たとえ許されるとしてもどこまで許されるべきか。重篤な遺伝病を防止するという健康に関するところまでか、それとも知能や身長、ルックスなどのあらゆる点について親が選択してもいいのか。

(2)社会的な影響(不平等)をどう考えるのか。ゲノム編集をすると社会はどうなるのか。例えば、上流階級の人間が自分の子供が優秀になるように遺伝子を選択でき、下流階級がゲノム編集をできないと、ますます不平等は拡大され、固定化されてしまうのではないか。

ダウドナたちの科学者の立場としては、世論がまとまるまで実験中止になるみたいな、研究ができなくなるモラトリアム状態が最悪なので、慎重に前進するという方向で意見をまとめようとする。科学者の立場としてはそうなるだろう。

この問題に対する意見はさまざまなものがありえる。みなさんも自分の意見というものがあるだろう。

そういうわけで、ここで、わしも自分の意見を開陳しておこうと思うのである。

わしの意見では、全ての遺伝操作を自由化すべきだと思う。

遺伝病については、これを編集しないほうが倫理的に問題があるだろう。生活習慣病とかガンとかアルツハイマー病とか、健康に関する遺伝子は編集されたほうが好ましいだろう。たぶん、ここまでは世論的にも合意が得やすいのではないか。やはり問題は知能とかルックスとか健康以外の遺伝子操作なのだと思う。

上流階級のお金持ちが遺伝子操作をして、自分の子供に有利な遺伝子を与えようとするとする。いいではないか。やってもらおう。

遺伝子操作サービスが始まっても最初はむちゃくちゃ料金が高いはずである。一方、遺伝子操作の結果が問題ないかどうかは、その人が死ぬまで分からない。もしかしたら何10年か後に、とんでもない副作用が現れるかもしれない。このようなリスクを上流階級の人たちは自分のお金を使って進んで引き受けてくれるのである。ありがたいではないか。

そして少なくともひと世代が過ぎた頃、ようやくどこがまずくてどこが良かったかなどの結果がまとまるだろう。そのころには、金額も非常に安くなり、リスクが低減したサービスになっているはずである。普通の人はそのころに始めるのがよろしいはずである。きっとわしらの孫、ひ孫の世代が利益を得ることができるということになるのではないか。

でもある遺伝子が良いということが分かると、やっぱり、先によい遺伝子を先行して受けた人たちが有利になってしまうのではないか?

まあ、それはそうかも知れない。しかし一番の問題は、その有利とわかった遺伝子に人々が殺到するということなのではないだろうか。つまり人類における遺伝的な多様性が減るのがいちばん困るということではないか。

しかし、わしの意見ではたぶんそうはならない。同じような遺伝子を持っている人があふれかえると、その遺伝子を持っている人の価値は下がるんじゃないだろうか。つまり遺伝子によってはレッドオーシャン化する可能性がある。そうなると、違う遺伝子を持っていたほうがいいと判断する人が増えるのかもしれない。

そうなると人気となる遺伝子にも時代とともに変わる流行のようなものが存在し、人気となる遺伝子も多種多様なものが出てくるだろう。

まあ、美男美女の定義すら、数10年もすればすっかり変わることは、わしらも経験しているわけですから、遺伝子もきっとそんな感じでしょう。

そういうわけで、放っておいても、きっとそれなりに多様性を確保できる社会になるのではないだろうか。つまり、生殖によりランダムに遺伝子が配分されるか、人間の意思が多少混じった状態でランダムになるかの違いで、そんなに変わらないんじゃないかと考える次第です。

そうだとすれば、社会的にそんなに影響がないんじゃないかと考えるので、別に自由化すればいいのではないかと思うわけです。

ひと世代も過ぎた頃には、コストも大変低くなり、平均的な出産サービスの一つになっていても別におかしくないなあ、と思う。子供でいろいろ実験ができるわけですから、子育ての楽しみが増えると考えればいいんじゃないですかね。ダメ?

 

 

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