2001 角川書店 リチャード スミッテン, Richard Smitten, 藤本 直
読書日:2012年02月10日
ジェシー・リバモアの伝記。
「欲望と幻想の市場」ではリバモアの内面が克明に分かって興味深かったが、なにぶん聞き語りのため、客観的な事実に欠けている。家族やスキャンダルの類の話である。そして何より、物語が大恐慌以前で終わっているために、大恐慌で神となった様子や死に様などはまったく語られていない。わしは予備知識として、リバモアが破産して自殺したことを知っている。それはどんなものだったのだろうか。
結論を言えば、リバモアは精神的な病により自殺したのだった。生命の活力を失い、明晰だった頭脳も狂ってしまった。いまなら単純にうつ病と診断されたことだろう。きっと抗ウツ剤で立ち直ったであろう、その程度のものに思える。離婚、再婚、家族間のトラブルなどがそれに拍車をかけた。
なにより破産はしたが、別に貧乏になったわけではなく、お金もたっぷりと持っていた。一般大衆からみれば贅沢な生活を死ぬまで続けたのだ。
トレーダーって市場が開いている限りなにか心がかきたてられる、そんな存在じゃないだろうか。心がかきたてられなくなったトレーダーって想像がつかないが、もしかしたらどんなトレーダーにもその日がやってくるのかもしれない。そのとききっと自分に生きている意味はないと感じるだろうなあ。
うーん、考えさせられる。
★★★★★