筒井康隆 新潮社 2021.2.15
読書日:2021.6.13
筒井康隆の死の影があふれる最新短編集。
表現の仕方は筒井康隆特有のアドリブ的なものだけど、ほとんどがそれぞれのテーマごとに昔を振り返る感じのもので、びっくりするくらい死の影が濃い。
ご自身がもう死を意識しなくてはいけないのは当然だが、息子で画家の筒井伸輔さんが2020年に51歳で亡くなったことが影響していることは間違いない。収録作品のうち半分以上がその後で発表されているのだから。
わしも息子が自分よりも先に亡くなったら、そうとうこたえるような気がするから、気持ちはわかる。
ジャックポットとはギャンブルの大当たりのことで、ハインラインの名作短編「ザ・イヤー・オブ・ザ・ジャックポット(大当たりの年)」から来ているのだという。これはすべての現象が最悪の周期を迎える年のことで、コロナの世相がどうもこの短編を思い起こさせるということで、最近注目されているという。
自分も、息子も、社会も、終わりの兆候を迎えているということで、こういう死の影が濃厚になるもの致し方ないのかもしれない。
さいごの「川のほとり」は、三途の川とおぼしき川のほとりで死んだ息子と会話する話だが、こういう夢をきっと本当に見たんだろうなあ。
★★★☆☆
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