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ドゥルガーの島

篠田節子 新潮社 2023.8.20
読書日:2023.11.14

(ネタバレあり。注意)

建設会社に勤めているもうすぐ50歳になる男が、インドネシアで未知の文化遺産に出会い、これを人生後半の生きがいにしようと奮闘する話。

篠田節子って名前だけ知っていたけど、どんな作家かまったく知らなかった。オカルトとSF、ミステリーが主な活動領域なんだそうだ。へー、知らなかった。そしてたくさんの賞を受賞している。こっちも知らなかった。どうも申し訳ありません。

というわけで、初・篠田節子ですけど、この作品が初めてで良かったのかしら。まあ、縁というものもありますし、良かったのでしょう。

どうして篠田節子の主たるフィールドについていろいろ考えたかというと、この小説を読んで、作家がこの小説で何をテーマにしているのかよくわからなかったからです。

主人公はもちろんいますし、いちおうラストの方にはスペクタルとして火山が噴火しそうになるわ、島を襲う不穏な連中が出てきてその連中との対決のようなものも出てくるわ、そういう物語上のサービスは出てきますが、それが登場人物になにか影響を与えたかというと、そんなことは全くありません。

主人公の夢は結局敗れるんですけど、すぐに次の目標を定めて、突き進むんですね。物語の最初と最後でなんの違いもありません。それは他の登場人物も同じで、誰もが何の変化もないので、何をしたかったのだろうと不思議に思ったわけです。けれど、篠田節子がSF作家と聞いて、なーんだ、と思いました。

これはもう、単に、現実にはないドゥルガーの島(ネピ島)をでっち上げたかったということですね。地理的な性質も、そこに住んでいる人の文化や人種ごとの対立とかの社会の構成とか歴史も、その地の古代文明がどこから来てそれにどういう意味があるかとかも全部丸ごと含めて。登場人物たちは単にその案内役に過ぎないわけです。

いや、SF作家としてはこれはまったく正しい発想で、それが目的ならば十分に目的は達成できているでしょう。物語もまあまあ面白かったです。

不思議なことはいろいろありますが、ほとんどのことにはきちんと筋の通った理屈が考えられています。けど、オカルトチックな話も出てきます。それが一番出ているのは、電池切れしたスマホをシロアリの群れに先住民が突っ込んだら、生物発電でフル充電できたという話ですね(笑)。これはもちろん、わざと「そんな馬鹿な」という部分を作っているのでしょう。理屈だけでは面白くないという判断なのでしょう。

まあ、篠田節子の本職のオカルト、SFの分野も気になるので、ちょっとその辺の本も読んでみるかな。

★★★☆☆

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