2005 岩波書店 森 達也
読書日:2007年03月22日
グレート東郷は単なる悪役レスラーではなく、日本プロレス創成期のキーパーソンだった。力道山も尊敬し、慕ってたという。しかも力道山が慕う陰には、出生の秘密(国籍)の問題も絡んでいるらしい。
つまりグレート東郷の物語にはプロレス、テレビ、国籍(ナショナリズム)の3大噺が入っている。そう直感した著者が調査をはじめる。
結論から言えば、グレート東郷を知る者から新しい証言を得ることはできたが、謎はまったく解明されないままに終わる。だから本の内容は、真実に迫ろうとする著者の話が中心だ。
予算と時間の関係もあるのだろうが、アメリカでも調査は現地のリサーチャーに任せて自分では調べに行かないし、日本でも直接グレート東郷と面識のある者はほとんど死んでるしで、中身は大部分、資料からの引用である。
面白くないこともないのだが、どうもいまいちだ。せめてアメリカで築いた巨万の富の中身がもう少し分かればよいのだが、これも「らしい」という感じで終わってしまう。
グレート東郷に肉薄しているような印象がまったくないのが困った点。
★★★☆☆
悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 (982))