ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

日本人の9割が知らない遺伝の真実

安藤寿康 SBクリエイティブ 2016.12.15
読書日:2026.3.30

知能(IQ)は遺伝の要素が大きく、環境の影響は小さいという身も蓋もない事実を明らかにして、IQにこだわらずそれぞれの遺伝子の能力を活かすような教育が必要と主張する本。

この本は、著者の研究が引用されている橘玲の「言ってはいけない 残酷すぎる真実」がベストセラーになったので、話題になっているうちにと、緊急出版されたものなんだそうだ。著者は曲がりなりにも世の中に研究内容を発信してきたのに、一人のベストセラー作家との発信力の差を見せつけられた形になったが、素直に橘玲に感謝している。

で、問題になった残酷な内容というのは、IQは遺伝の影響が54%と圧倒的で、共有環境(家庭や学校など)の影響はたった19%しかなく、さらに環境と関係ない内容不明で偶然的な非共有環境が27%と、というものだ。

これを単純に考えると、親や教師の教育の影響はほとんどなく、いい学校に進学しても、高額な塾などに通わせても、あまり効果がないということになるので衝撃的だったのだ。

それだけではない。収入に対する遺伝子の影響も圧倒的なのだ。社会人になったばかりの頃は、いい家庭の子供は確かに良いところに就職できて収入も大きいが、年齢が増えるに従ってその影響はだんだん減ってきて、30代で遺伝の影響が環境の影響を逆転し、40代では育った家庭の優位性がまったくなくなってしまうのだそうだ。これは本人の努力とまったく無関係に、ほぼ遺伝で生涯年収が決まってしまうというわけで、非常に残酷な結果だと言える。

面白いのは、ほぼ遺伝子で決まるため、一卵性双生児で二人が異なる家庭に育てられて、異なる学校を出て、異なる職業についても、結局、同じような収入になるんだそうだ。これはすごいを通り越して呆れてしまうくらいだ。

では教育の効果はないのだろうか。

ここでさらに残酷なのは、すべての人に教育が行き渡ると、教育の効果が大きい人と効果がない人の差が大きくなり、格差がさらに拡大してしまうことだ。効果が大きいか小さいかは、もちろん遺伝の影響なので、教育は遺伝子の格差をさらに広げるように働いてしまうのだ。

というわけで、遺伝子でほとんど決まってしまうとすると、いったい努力とはなんだろうか、という気になってしまう。

しかし、収入や世俗的な成功はあったほうがいいかもしれないが、幸福な人生とはあまり関係がないと安藤さんは言う。幸福な人生とは、自分の遺伝子にある能力を開花させることなのだ。

そういうわけで、将来の教育の役割は、人それぞれに自分にあった道を悟らせる、というものになるかもしれないという。そして、それは必ずしも収入を伴わないかもしれないので、そこは社会的に保証するなどして、幸福を実現する社会を作るのがいいという。

具体的にはベーシックインカムのような制度を考えているが、ベーシックインカムにはフリーライドを招くという批判がある。しかし著者の安藤さんはこの点には楽観的で、人間は基本的にじっとしていられない生き物で、なにもしないということはありえないのだそうだ。何かをすれば、きっと自分の遺伝子の才能を開花させる方向に行くだろう。

しかし、そんな幸福を実現するような社会が本当に誕生するのだろうか。

個人的には、将来は、食料、住居、教育が無料化する方向だと思っていますので、そのような社会が来ると、わしは思っています。

www.hetareyan.com

** 遺伝子と環境の影響を計算する方法 **
わしが一番興味を持ったのは、遺伝子と環境の影響をどのように把握するかという問題だ。
ここにその計算方法をメモで残すことにする。
(1)一卵性双生児と二卵性双生児をサンプルに選び、両者のIQテストをして、相関関数を求める。すると、たとえば一卵性双生児は0.73、二卵性双生児は0.46という数値を得る。
(2)環境に影響されない成分(非共有環境)は、一卵性双生児の一致しない成分から得る。なぜなら一卵性双生児は遺伝子も環境も同じなのに、似ていない部分が出るのは純粋に環境に依存しない部分だと言えるからだ。計算は1から相関係数を引く。
   1−0.73=0.27 (非共有環境)
(3)相関関数のうち、どのくらいが遺伝子の影響でどのくらいが環境の影響かは、次のように計算する。遺伝子の一致は、一卵性双生児の場合はすべて一致しているから1とする。二卵性双生児の場合は一致している遺伝子は全体の半分だから0.5とする。また、どちらも双子だから環境から受ける影響はおなじとする。遺伝子の影響をx、環境の影響をyとすると、
   x+y=0.73 (一卵性双生児)
   0.5x+y=0.46 (二卵性双生児)
となる。この連立方程式を解き、x=0.54、y=0.19 を得る。
 結論として 遺伝子の影響54%、環境の影響(共有環境)19%、環境以外の影響(非共有環境)27%となる。

★★★★☆

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