大塚あみ 日経BP 2025.1.14
読書日:2026.3.13
何事にも集中できず、楽をすることには熱心な著者が、ChatGPTを使ったプログラミングだけは集中することができ、毎日必ずアプリを作って連続100本、Xに投稿しするチャレンジをしたら、プログラミングの腕がメキメキ上達して、その経緯を国際学会で発表したら評判を呼んだ、という体験を出版したベストセラー本。
たぶん、この本を読んだ人は、彼女がチャレンジをしていくうちにプログラマーとして成長していく姿に感動するのではないだろうか。彼女はプログラミングのコードは自分では書かないかもしれないが、プログラミングというものの本質を理解するようになり、プロのプログラマーのような考え方をするようになるのである。そして、ChatGPTのようなAIを使うと、トライ、エラー、改善のサイクルが異常に速くなる。学びにAIを使うメリットに誰もが驚くのではないだろうか。たぶん、それはプログラミングだけではなく、すべての学びに有効なはずだ。この本を読めば、我々はAIにより全く新しい教育の次元に入ったことを実感するだろう。
この100日チャレンジを始めたとき、大塚あみは経済学部の4年生だったそうだ。大学4年生のこの時点で、まず彼女は卒業のための単位がまだ揃っていなかった。だから彼女がChatGPTを使ったプログラミングを学ぶ講義を取ったのは、卒業のための単位を確保するためだった。当然この講義の提出物が少なく、取りやすいことを確認して申し込んだ。
もうひとついうと、この時点で彼女は卒業後の展望がまるでなかった。通常は3年生のときから活動を始めているはずの就職活動は、このとき全く手つかずだったという。
彼女は熱心なゲーマーでもあり、プログラミングについては興味があった。しかし、プログラミングの本を読んでもまったく頭に入らず、最初の数ページを読んで放り出しているような状況だったらしい。でも、VBAで数当てゲームを作った経験はあったらしい。そしてそれは大変苦労したという。自分はプログラミングには向いていないと思っていたそうだ。
そういうわけで、ChatGPTでプログラミングを生成できるという話を聞いたとき、彼女はさっそく講義中にオセロゲームのプログラムを書かせてみた。そうしたら、見事に動いたのだ。それは単純なものだったが、簡単にできてしまったことに感動する。
このへんが素晴らしい。興味を持ったら、すぐにやってみるという習性が彼女にはあったのだ。そしてChatGPTを使えば面倒なプログラミングのことを学ばなくても良いということが分かった。講義をしていた教官の佐々木さんがそれに気がついて、「講義中にゲームを作ってみせた生徒は君が初めてだ」と言われる。
こうして、ゲームをいくつか作って調子に乗った大塚さんは、100日間ゲームを毎日作ってXにアップするという挑戦を開始するのである。
それはこんなふうに進む。大塚さんが、こんなのを作って、とChatGPTに頼むとすぐにコードが生成される。しかし、大抵は動かず、エラーが出る。そのエラーがなぜ出るのか、またChatGPTに訊いて、その答えをみて改良する。
やっているうちに、もっとこんなふうにしたいという希望が出てきてそれをChatGPTにやらせてみる。すると、ChatGPTは、それならばこんなふうに設計を直したほうがいいというような提案が出てくるので、それはどういうことかをさらに質問する。
こんなふうにChatGPTと二人三脚でやっていくうちに、ライブラリとかクラスとかの概念を理解して応用していくようになる。
ChatGPTを使ってプログラミングを学ぶということは、トライして失敗してその改善をするということを、非常に高速に行うということだった。
そして大塚さんはいろいろ学びながら、たくさんの気づきを得るのである。それは例えば、ChatGPTは自分を超えることはできない、ということである。自分が成長しないと、ChatGPTに適切な質問ができない。質問の質に回答の質はリンクしているのである。
また、ChatGPTはたくさんのコードを出力してくれるが、そのなかからふさわしいものを選ぶという作業にもプログラム全体の構成を理解していないと適切なものを選択できない。全体の構成を考えるという習慣を身につけたのだ。
チェレンジには1日12〜13時間費やしたのだという。大塚さんは、興味を持てないことにはまったくやる気が出ないが、興味を持つとそれを延々とやれるという、全集中の人だったのだ。おそらく100日間で、1500時間ぐらいをプログラミングのことを考えるのに費やしただろう。作ったプロンプトは8123個だったそうだ。
もうひとつ大事だったのは、プログラミングをしている間、メモをきちんととっていたのだそうだ。同じ問題が起きたときに、昔の知識を再利用するためだったのだそうだが、結果的にこのメモがそのまま論文になり、学会に発表することができた。
さて、このような成果を出した大塚さんは、卒業間際になっても就職には興味が持てず、心配した教官の佐々木さんに言われて、しぶしぶ面接をうけていくつか内定をもらう。こうして就職したようだが、しかしもともと興味がなかったところで、この本がベストセラーになったということでもうすでに退職し、いまはタイに移住をしようとしているようだ。年収は2000万円だそうです。いまのところお金持ちライフを満喫しているみたい。
まあ、今後とも、作家、起業家として、なによりAIを人生にどう味方にしたらいいのかについての実験を今後も続けて報告してもらいたいな。
★★★★☆

