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二分間の冒険

岡田淳 偕成社 1985年4月
読書日:2026.1.20

(ネタバレあり、注意)

体育館から保健室へ行く2分間の間、小学生の悟(さとる)が黒猫のダレカに別の世界に冒険に連れ出され、竜を退治して帰ってくる話。

時々、児童文学が読みたくなることがある。

児童文学の多くは、大人の読む普通の小説よりもはるかにラディカルで、根本的なことをテーマにしていることが多い。そしてなにかパラドックス的な要素が入っていることも多い。どこか寓意的で、わしが好きなSFに似ているところがある。

というわけで、今回、名作と言われている、本書を読むことにした。

この作品で中心になっているテーマは時間だ。

主人公の悟は、体育館に落ちていたとげ抜きを保健室に返しに行くのだが、そのための時間が2分間。ところがその途中に、黒猫のダレカと出会い、そのとげ抜きで見えないとげを抜いてほしいと頼まれる。そのお礼に好きなものをくれるというので、うっかり時間をくれと言ってしまい、この現実の時間とは別の時間が流れている世界に連れてこられてしまう。

元の世界に帰るには、この世界のどこかにいるダレカを探し出して、見つけなければいけない。ダレカはこの世界で確かなものの中にいるという。

ところで、その異世界で出てくる子供たちは、みんな悟のクラスメート。つまり、この世界は悟の夢のようなもので、悟の内面の時間なのだ。この現実の時間と内面の時間が違うということがひとつのテーマになっている。

さてその異世界では、子供と老人しか出てこない。つまり大人は一人もいない。竜が魔法で国中の大人の若さを奪ったのだという。

そういう事になっているのだが、実際には作者が仕事をする大人を出したくなかったからじゃないか、という気がする。つまり、大人は仕事をして社会に貢献する人たちで、彼らがいると、時間を有効に使うとか、締め切りとか、なにかと時計のある現実の時間っぽい話が入ってくる。つまり、大人に流れている時間は子供や老人のものと違っていると言えるから、このような現実の時間に近いものを排除するために大人がいないんじゃないかと思う。

そういうわけで、子供や老人が持っている純粋な人生の時間がもうひとつのテーマになっているのだろうと思う。

なお、大人の代わりに誰が労働をやっているのかと言うと、竜が魔法でやっているということになっている。農作業も魔法で行われているようで、食事は魔法でいつのまにか準備されることになっている(笑)。ちょっとつじつま合わせっぽいけど、まあ、いいでしょう。

ところで、時間を扱っている児童文学としては、ミヒャエル・エンデの「モモ」が思い浮かぶ。しかし、モモで扱っている時間は、仕事などで時間を奪われていく現代人の時間がテーマだった。だから大人が出てきてもいいし、「時間泥棒」たちはビジネスマン風なわけだ。しかしこの物語で扱われている時間は人の内面の時間で、現実とは異なった時間だから、この物語ではそのような大人は排除されているのだろう。

さて、この国には決まりがあって、毎年、白と黒の矢が当たった家の子供(必ず男女らしい)が、国王の城に行って竜と対決し、負けると竜に若さを吸い取られ、老人になる。なぞなぞと、剣の対決で竜と戦うことになっているけど、これまで勝ったものはいない。

ある村では矢の当たった家の「かおり」が城へ行くことになったが、もうひとり行くものがいなかった。そこにのこのこ現れた悟は、事情がよくわからないままかおりと一緒に城へ行くことにする。

城に集まった全国の子供たちは、悟にとっては、みんなクラスメートの男女。毎日、彼らは一組ずつ竜と対決させられ、年寄りになってしまう。最初は子供たちは協力し合わないけれど、それは国王の策略で、その策略がバレてからは、子供たちはお互いに協力するようになって、竜をやっつける。竜はじつはサンショウウオで、爬虫類的でも恐竜的でもない、ぶよぶよ、ぬめぬめの両生類だった。この辺の硬質な生物から柔らかい生物への転換が面白い。またこの竜と契約したのは、寿命で死にたくなかった国王で、こうして国民を犠牲にして自分の寿命を保っていたということが分かる。

ところで、ダレカはどこにいたのでしょうか。この世界は悟の内面の世界そのものだから、この世界で確かなものとは、悟るしかいないわけで、悟は自分のなかにダレカを見つけて、元の世界に戻るのです。

結局、黒猫のダレカとは何だったのかが気になりますが、悟の内面にいたのですから、悟の内面の一部が実体化したものと考えるのが自然でしょう。深読みすれば、持っていたのがとげ抜きだったから、悟の心にあるなにかのとげが実体化したもので、それはかおりと関係がありそう、と想像できますが、そのへんは明確に語られません。

こうして、悟がちょっと成長したかなというところでお話はおしまいです。

それにしても、児童文学って定番になったらどれだけロングセラーになるかということに、わしは驚嘆しました。本書は1985年に初版発行だけど、図書館で借りたこの本は2010年で46刷である。超ベストセラーかつロングセラーなのだ。2025年に40周年を迎えて、講演会やフェアが行われたという。なにしろ親から子にずっと引き継がれて子供たちに買い与えられ続けるのだから、児童書で定番となることほど、すごいことはないよね。

★★★★☆

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