ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

過疎ビジネス

横山勲 集英社 2025.7.22
読書日:2026.1.10

2016年、企業が地方自治体に寄付をするとその9割が減税されるという、ふるさと納税の企業版が登場した。するとさっそく、寄付をして、さらにその寄付を使った事業を受注するという、減税と事業利益で2度おいしいスキームが登場した。福島県国見町の案件でそのスキームに気がついた河北新報記者の著者が、その顛末を追いかけた本。

たぶん、この本を読んでも驚く人は誰もいないんじゃないかと思う。国が地方にお金を回すような施策を行うと、必ずそれを利用しようとする人たちが出てくる。たいていはその地方にとってなんの役にも立たない事業が行われる。

こういった無駄な事業を提案してくるのは、専門のコンサルタントだ。なぜなら、地方自治体にはそのような事業アイディアを考える人材などいないからである。というか、そのような人材がいない小さな地方自治体こそが狙い目となる。そしてこのような小さな自治体では地縁が機能しており、町長などの首長は住民から文句を言われない場合が多く、かなり首長の裁量だけで物事を進めることができる。

とはいえ、こういう事業はたいていは合法である。今回はどこが問題になったのであろうか。

問題になったのは、国見町に4億円の寄付をおこなったIT大手のDMM.comと、事業を請け負ったベルリングの関係である。ベルリングはDMM.comのグループ会社だからだ。

問題点は2つ。DMM.comは最初からベルリングが事業を請け負うことを条件に寄付をおこなったのだろうか、という点がひとつ。もうひとつは、事業の請負は公募によって決められるので、国見町は公募の条件をわざとベルリングに有利に作ったのではないか、という点である。

なお、寄付してくれた企業名は匿名にできるので、最初はどこが寄付してくれたのか分からなかったが、のちにDMM.comは寄付をしたことを認めている。しかし、グループ会社が事業を請け負うことを条件に寄付したわけではなく、公正に検討した結果だといえば、それ以上疑う根拠はどこにもなかった。

しかし、事業の公募に関しては、国見町はベルリングしか請け負えない条件を付けていた。

今回の事業は、寄付金で高機能救急車を12台調達して、近隣の自治体にリースで貸し出すというものだった。この救急車の仕様がベルリングの提供している救急車の仕様になっており、他社は最初から参入できないようになっていた。つまり出来レースになっていた。

このようなスキームを考え出したのが、コンサルタント会社のワンテーブルという会社で、代表の島田昌幸は総務省から地域力創生アドバイザーという肩書を得ており、その肩書をもとに様々な自治体に事業を提案していた。救急車の仕様など、国見町の役人が書けるはずがないから、ベルリングの救急車の仕様はワンテーブルから渡されていたのである。

河北新報の報道で、国見町では百条委員会まで開かれたが、結局町長は辞任することはなかった。しかし、次の町長選に落選した。ワンテーブルの島田社長も社長を辞任することになった。

この本では、このような過程がなかなかの迫真性を持って書かれてあり、飽きずに読むことができる。

ちょっとよく分からなかったのは、この町長にとってどこにメリットがあったのかということだ。公共事業関係なら、町長ゆかりの土建屋が儲かるという明らかなメリットがある。しかし、この救急車リース事業って、うまくいくようにはほぼ見えないので、町や町長にどんなメリットがあったのか分かりづらい。もしかしたら、町長はワンテーブルの説明に納得して、儲かると本気で思っていたのかもしれない。

さて、国見町の例では、曲がりなりにも正すことができた。

とはいえ、このような事業は今後も行われるだろうし、いくら条件を厳しくしても、抜け穴を利用しようという人は必ず現れるだろう。それは仕方がないことである。一方、このような制度をうまく利用して、地方を発展させることに成功した地方の例もきっとあるだろう。

わしの直感では、こうした制度利用のうち、甘めに評価して1割でも成功したら良しとするべきではないかな。普通の起業でも成功するのはきっと数%程度だろうからね。

★★★☆☆

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