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物語論 基礎と応用

橋本洋介 講談社 2017.5.1
読書日:2025.11.18

物語とは「時間的な展開のある出来事を言葉で語ったもの」であるから、ここには語り手がおり、語り手の視点があり、語るときの形式があり、語るときの時間の流れがあり、言語により語り方が異なったりするなどの基本的な形式をみたあと、実際の物語を分析してみせた本。

わしは、高校の頃から物語とはそもそもなんだろうか、ということを考えて、物語には次のような特徴があると考えた。
(1)キャラクターが必須であること。
(2)時間の流れが必要なこと。
これをまとめて、物語とは
「ある人物(=私)が時間の流れの中で経験する出来事や行動のこと」
と表現した。

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この本の物語の定義によれば、物語とは「時間的な展開のある出来事を言葉で語ったもの」なのだそうだ。

わしは物語にはキャラクターが必須だと考えたが、この本ではその点について考えていないようだ。この点について、考えていないのは不思議な気がする。

一方、この定義には「語ったもの」という表現があり、つまり誰かはわからないけど、ともかく「語り手」という存在がいるということを示している。そういえば、わしは、語り手が存在することを定義していなかった。しかし、考えてみれば、この存在は必須だ。つまり、物語とは誰かが誰かに語っていることなのだ。

当たり前のようだが、これは実に不思議なことではないだろうか。誰かが誰かに語っている、という形式を取らないと、物語は成立しないのである。わしは人間の思考は物語形式が基本になっていると思っているので、人間の思考って誰かに説明することが前提になっている、という結論になる。ほんとうかな?

このような物語の形式について初めて考えたのは、ロシアのウラジミール・プロップという人で、1928年に出した『昔話の形態学』という本が出発点だそうだ。これはロシアの昔話を研究したもので、ロシアの昔話には31の機能があるとした。

その後、1960年代にフランスのクロード・ブレモンが、物語の展開とは可能性の論理としたという。例えば、電話がなると、主人公は、電話に出る、か、電話を無視する、という2つの可能な選択肢があるという。

1960年代は構造主義が世界に蔓延した時期であり、ロラン・バルトが、『物語の構造分析序説』を発表している。ここでは、物語を「機能」と「指標」に分けて分析しているそうだ。機能には物語の筋を展開させる「枢軸機能体(あるいは核)」と、筋の展開に関係あるものの副次的な「触媒」がある、と分析した。また、「語り手」の問題を初めて導入したのは、バルトなんだそうだ。

構造主義の決定版と言えるのが、ジェラール・ジュネットの『物語のディスクール』だそうで、1972年だそうだ。それが日本に持ち込まれたのは1980年代のことだそうだ。

なんでこんなことをごちゃごちゃ書いているかというと、わしが「物語とはなにか」を考えていたのが、1980年ごろのことだからである。もしかして、その頃、ジュネットのことを知っていたら、わしはその本を読んでいたのかもしれないなあ、と思う。そして、わしがああでもないこうでもないと考えていたことは、意外に世界の最先端だったのかもしれない、という気もした。わしはいつものように、いろいろ自分で考えるけれど、そういうことを誰かが議論しているかどうかをまったく調べようとしなかった(笑)。もっとも日本語版が出たのは1985年頃だし、ほぼ専門書だし、マイナーな出版社みたいだから、まず高校生のわしの目に止まるわけないよね。

ジュネットの分析は、物語に流れる時間の分析とか(流れる時間の速さとか、メタ構造の場合の時間の流れとか含む)、視点と語り手の問題とか、そういう話がされる。それ自体はそんなに難しくないし、小説や映画を観ている人にはきっと日常的に経験していることだろう。

橋本さんによれば、視点について、あくまで客観的に語ろうとするヨーロッパ系の視点に対して、日本語の表現者は地の文の中に、登場人物の内面面の言葉を自由にオーバーラップさせるという。たとえば日本人には「部屋に入ったが誰もいなかった」という表現は普通だが、ヨーロッパ系の人には、「お前がいるだろう」と突っ込まれるのだそうだ。ヨーロッパ系の人は「部屋に入ったが、<私以外は>誰もいなかった」と客観的に表現しようとするそうだ。ただし、ヨーロッパ系のひとも、この辺の視点の自由度は増しているのだそう。

まあ、この辺は言語的というか物事の捉え方の枠の問題といえるだろうけど、物語の本質とはあんまり関係ないような気がするな。

後半の実際の物語の分析では、映画とかアニメ、あるいはライトノベルとかの引用も多く、橋本さんは一体どれだけ物語を楽しんでいるのだろうと不思議に思った。これは世界の文学、映画、漫画・アニメ案内にもなっている。どうやら、この中では、少なくとも「百年の孤独」を読んでおいたほうがよさそうだと思った。最近、文庫化されてバカ売れしているそうだしなあ。

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