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個人投資家目線の読書録

PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則

レイ・ダリオ 訳・斎藤聖美 日本経済新聞出版社 2019.3.30
読書日:2025.9.26

投資会社ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオが、人生と仕事の両面において長年蓄積してきた原則を公開した本。

人生の目的を叶え、成功するために何が必要かということを書いた本はたくさんあります。しかしひとりの人間が何でもかんでも経験できない以上、その内容の多分半分以上は自分の直接体験ではなく、知人が経験した話(直接聞くならこれはまだマシ)か、他の本を読んだ内容になります。

しかし、この本は違います。すべてレイ・ダリオが実践して効果があったものだけを集めているのです。そのせいか、この本に書かれてあるどの文章も、他の本ではありえなくらいの迫力があります。どの原則にもレイ・ダリオの手垢が真っ黒についてます。

しかも内容は個人の人生に関することだけではありません。1500人を擁するブリッジウォーターという会社が成功するため(成功し続けるため)に必要な原則に横展開しており、それをシステム化しています。つまり、この本に従えば、個人の人生も会社の経営もシステムなのであり、システムを絶えず改良していくことで目的を達成できる、としているのです。図にすると、次のようです。

目標を設定する → そのための原則をシステム化する  → 問題発生
  → システムを改善 → 問題発生 → システムを改善(このループをずっと続ける)  → 目標達成(成功)

これを見ると、既視感があるでしょう。つまりこれはトヨタ生産システム「カイゼン」と同じことをしているといっていいでしょう。レイ・ダリオは、これをシステムではなくマシンと呼んでおり、良いマシンを作っておけば、たいていのことにはすぐに対応でき、意思決定も非常に効率的にできるといいます。なにか問題が発生するたびに、この原則に立ち返って、必要なら修正し、マシンを改良していけば、成功の確率は飛躍的に高まるといいます。

この原則ではたとえば次のようなことが大切といいます。

(1)現実を受け入れ、事実に即して考える。
これが最も大切なことです。人間は弱いので、なかなか事実を受け入れることができないこともあります。しかし、エゴを捨て、心をオープンにして、どんな苦い現実であれ受け入れなければなりません。なかなか自分を客観視できないので、信頼でき率直な意見をいってくれる人が必要だったりします。願望や怒りではなく、事実を集め、事実に即して判断する必要があります。

事実をきちんと集めることさえも苦労することがあります。自分だけでもそうですが、特に多くの人がからむ会社の中では苦労します。なので、ブリッジウォーターではすべてをオープンにしています。驚いたことに、ブリッジウォーターではすべての会議を録画して、必要なら誰でも見られるようにしているそうです。もしも会議に出ていない人の名前が出た場合、その人にわざわざ映像を送るくらい徹底されています。例外はプライバシーに関することと、裁判などの機密事項に関することぐらいのようです。このくらいオープンであることを重要視しているのです。ブリッジウォーターはアイディア本位の経営を標榜しており、オープンであることはその基礎だそうです。

(2)根本にさかのぼって原因をさぐる
なにか問題が起きたとき対症療法をするのではなく、もっと根本の原因まで追求する必要があります。そして、原則を修正する必要があるのかどうかを検討するのです。これは、カイゼンで5回なぜを繰り返すのとよく似ています。原則でも、なぜを繰り返すことを推奨しています。

(3)人はそれぞれ違うことを理解する
目標を達成するには大抵は他の人との協力が必要になります。そして人は同じではなく、得手不得手があります。しかし人の特質についてはもちろん、自分がどのような特質を持っているかについてさえ理解していないことがあります。そこでブリッジウォーターでは、心理学の性格検査を複数行い、それを人事に生かしています。レイ・ダリオはまず自分や家族に試してみて、十分使えると確信し、会社でも積極的に使うことにしたそうです。

性格検査を仕事に最適な人を選ぶのはもちろん、チームを作るときに最適な組み合わせになるようにしているそうです。驚いたことに、社員全員の検査結果がオープンになっています。レイ・ダリオによれば、社員を知るには直に話し合うのが一番だが、全員と話し合うのは無理なので、このような科学的な方法を使っているそうです。そして、これでもかなりその人のことが分かるといいます。最初の頃、社員の採用は自分に似た人物を選んでいましたが、いまでは多様性を重視しているようです。

ブリッジウォーターのマシンの部品は人そのものです(一部、アルゴリズム)。人を本当に部品のように管理しているんですね。

(4)意思決定
原則はアルゴリズムに組み込まれていて、コンピュータとともに意思決定します。感情に流されないアルゴリズムはとても決意が硬いそうです。こういうアルゴリズムによる意思決定は投資などに使われています。

面白いのは人による意思決定の方法で、関係者で集まって投票により意思決定を行うのですが、単純なひとり一票の投票ではなくて、人によって信頼性を加味するんだそうです。比べてみると、単純な投票と信頼性を加えた投票では結果が異なるといいます。そして、だいたい信頼性を加味したほうがあとからの検証で正しい結果を得られているそうです。

さて、レイ・ダリオは自分用の原則を作り、マシンを作ってそれを詳細に述べてくれましたが、人によって達成したい目標(価値)は異なりますから自分なりの原則を構築してマシンを作るべきだといいます。しかし、どんな目標であれ、(1)のオープンで現実を受け入れ事実に基づいて判断する、という点はもっとも大切で、絶対に外してはいけないそうです。

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