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格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか

オデッド・ガロー 監訳・柴田裕之 訳・森内薫 NHK出版 2022.9.30
読書日:2025.8.25

格差の原因は人類が誕生したアフリカから人類が移動してきた距離と、大陸の形状に原因があると主張する本。

世界の発展している地域と停滞している地域の格差は、地理的な条件によっているという、ちょっと驚きの格差論である。

現在の先進国はほとんどヨーロッパにあるし、アメリカもヨーロッパの発展型ということになるわけだから、結局、ヨーロッパが発展しているということになる。なので、なぜヨーロッパがこれだけ発展したかという話になる。

ヨーロッパで何が起こったかというと、18世紀に産業革命が起こった。この結果、人類史上で初めて「マルサスの罠」(生産量が増えても人口が増えるので結局生活水準はもとに戻るという話)を突破して、生活水準を持続的に向上させることに成功した、ということである。

これは人口における相転移である、とガローは主張する。

つまり、産業革命以前では人数が多いほどたくさん生産できたから、子供をできるだけたくさん作っていた。単純に人数を増やすことが成功の方程式だったのである。しかしこのように子供をどんどん生んでいくと、いつまで経ってもマルサスの罠から抜け出すことはできない。

しかし産業革命以後は、子供の数が少なくなっていった。その代わりに教育に力を入れて、一人ひとりの子供への投資を増やし、一人あたりの稼ぎを増やす方向に舵を切ったのだという。これは人類史で初めて起こったことだった。

ということになると、次の疑問はなぜヨーロッパで産業革命が起こったのかということである。

ガローによれば、技術が発展するには2つの要因が必要なのだという。

ひとつは人口の規模である。人口が多いほど、新しい技術が生まれる可能性が高まる。しかしこの人口というのは、単にヨーロッパの人口のことだけを言っているのではない。世界中の人類全体の人口のことを意味している。技術はどこで生まれても、通商関係のあるところには遅かれ早かれ伝播してしまう。実際、火薬や活版印刷羅針盤などは、とても人口の多い中国で発明された。しかし、中国では産業革命は起こらなかった。

それは中国にはもうひとつの必要な要件がなかったからだという。そのもうひとつとは、人口の構成、簡単に言えば多様性なのだそうだ。多様性が高い方が技術の発展は速いんだそうだ。まあ、確かにヨーロッパは小さな国がごちゃごちゃとたくさんあって、多様性は高そうだ。中国と比べてもヨーロッパの方が多様性は高いと言えそうではある。

つまり、ヨーロッパは人口も多かったし、多様性も高かった。だから世界のどこよりも産業革命が起こりやすかった、というのである。

人口の多さについては、農業と関係ある。農業は中東の黄金の三日月地帯に起こった。ヨーロッパは三日月地帯と同じユーラシア大陸の温帯地域にあったから、この新技術を適用できた。ユーラシア大陸は横に長いので同じ気候で農業が伝わりやすいのだ。しかしアフリカ大陸は南北に長く、緯度により気候が異なるので、農業という新しい技術は伝わらなかった。同様に家畜も伝わらなかった。なぜなら、アフリカはツェツェバエが強すぎて、家畜が死んでしまうからだそうだ。横に長いユーラシア大陸と縦に長いアフリカ大陸の話は、ジャレドダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」に詳しい。

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人口の多さは農業で理解できた。では、多様性はどうだろうか。

人類が発生した東アフリカは、もともと多様性が非常に高いのだという。この多様性が高い東アフリカから中東を通って世界中に人類は広がっていった。

しかし、最初高かった多様性は、東アフリカから離れるにつれて減っていくのだという。これは人類が広がって行くというのは、ある部族のうちの一派が離れて遠くへ行き、またそのうちの一派が離れて遠くへ行き、というふうに分派が次々起きるということであり、この結果遠くへ行くほど多様性が低下するのだという。

じっさい、東アフリカからの移動距離で多様性を計測してみると、きれいに直線上に乗って、移動距離が遠いほど多様性は減っていくのである。

東アフリカからはヨーロッパのほうが中国よりも移動距離は短い。だからヨーロッパのほうが中国よりも多様性が高いんだそうだ。

そういうわけで、人類が東アフリカを出たときからの地理的な距離という要因が多様性に影響し、産業革命が起きたかどうかの運命をわけた。それが現在の世界的な格差の根本原因だというのである。

産業革命という歴史的事件が大陸の形状や東アフリカからの移動距離という地理的な条件で決まってしまうとは。筋は通っているようだけど、なんとなく騙されたような気がするのは、わしだけ?

★★★★☆

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