三谷幸喜 松野大介 講談社 2024.9.1(電子書籍版)
読書日:2025.4.13
劇作家、小説家、演出家、映画監督の三谷幸喜がデビューから2013年の「大空港2013」までを述べた本。
三谷幸喜ってコメディ作家という触れ込みだけど、笑えるというイメージがまったくないなあ。面白くないわけじゃないけど、どうもげらげら笑った経験は思い出せない。
でも、往年のアメリカのシチュエーション・コメディを目指しているのなら、まあ、そういうものかとも思う。だって、アメリカのシチュエーション・コメディを、わしは面白いと思ったことがないのだもの。つまんなくないですか、あれ?
というわけで、なんともわしとは感性が真逆な人らしいのだが、その創作過程はなかなか興味深いものがあった。
三谷幸喜の創作の原点は、子供時代の兵隊さんの人形を使った人形遊びなのだそうだ。なんと何百体も持っていたんだそうで、どんだけ裕福な家に生まれとんねん。
人形は本当に兵隊しかなかったので、女性とか兵隊じゃないキャラクターは紙に顔を描いて張り付けていたんだって。そういうわけで、彼の作品はコメディ・密室・群集劇が基本なんだそうです。
そういえば、よくあれだけたくさんのキャラクターを時間の流れも間違わずにうまく回して物語を創っているなあと感心するけど、何百体の人形に役を割り振っていたんだったら数十人ぐらいは楽勝なのかもね。
その物語は、もちろん、何かを伝えたいというメッセージがあって創っているわけではない。人形劇と同じように、あの役者にこういうことをさせたい、こういうシーンを作りたい、という思いが先にあって、それを実現するための物語を創るというわけなんだそうだ。(たとえば、有頂天ホテルは、佐藤浩市が窓の外で飛び跳ねているシーンを撮りたくて、そうなるように物語を創ってるんだとか)。
だから、じつは何もないところから創るのは苦手、というか無理なんだそうで、逆に、こういう状況なんですけどなにか一本作れませんか?的な状況のほうが燃えるんだという(笑)。
たくさんのキャラクターの行動表を作成して、それを見ながら脚本を書いて、破綻がないように創るんだけど、でも絶対に辻褄が合わない破綻する場面ができてしまうんだそうです。でも、実際にはそういう破綻した部分が、その作品の魅力になったりして、破綻ってそんなに悪いものでもないらしい。
映画はたくさんの人が関わっているし、たくさんの人が観るから、それなりに客の期待に合わせて創るけど、予算が少なくてすむ演劇のほうは、自分のやりたいことエゴ全開でやるんだそう。
どうもコメディって、状況の辻褄合わせを楽しむものらしい。三谷幸喜は人形遊びに始まって、人形遊びに帰っていくんだね。
★★★☆☆