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鹽津城(しおつき)

飛浩隆 河出書房新社 2024.11.20
読書日:2025.2.18

(ネタバレあり。注意)

日本SF大賞を2回も取った作家が描く、ある世界とその世界に隣接した別の世界の相互作用を描く、短編集。

わしは小説はあまり読まないが(1年に10冊ぐらいか?)、読むときにはかなりの確率でSFを読んでいる。しかしSFマニアでもなんでもないので、特に21世紀のSF、とくに日本SFがどうなっているかについては非常にうといのである。

なので、SF大賞を2回も取ったという飛浩隆のことは全く知らなかった。というわけで、今回初めて読みました。それで、どう思ったかと言うと、これってSFなのかしら、純文学なんじゃないの? という感じ。もうSFと純文学の境はわけがわからん。

SFと純文学に境界線があるとすると、少しだけSFよりなのかなあ。本人はSFのつもりで書いているような気がする。

まあ、特徴を言えば、どの作品も2つ以上の世界が出てきてそれらが関連している、ということでしょうか。そしてそのつながりは、概ね物語を通して繋がっているようです。一方で架空のことがもう一方では現実、みたいな。この作者がこういう傾向の作品ばかり書く人なのか、それとも今回の短編集ではたまたま似たようなものが集まったのか、わしには分かりませんが。

具体的に表題作の鹽津城(しおつき)について言えば、こんな感じ。鹽津城は概ね3つの世界があります。この世界は海の塩がなぜか海から分離し、陸を襲ってくる<鹵攻(ろこう)>という現象が起きているという設定。

1番目の世界は、中国地方の日本海側にあるL県の塩満(しおみつ)という町。ここには託郎(たくろう)と巳衣子が住んでいる。
巳衣子は不思議な女性で、妊娠したが流産している(相手は不明)。夜な夜な徹夜で何かしているが、どうやら塩絵というものを制作しているらしい。そして町は<鹵攻>に襲われている。

2番目の世界には、世界最後の漫画家といわれる統木治人(すめらきはると)がいる。統木治人とは一瀬(いちせ)と百瀬(ももせ)の姉弟ペンネームで、二人は<鹵攻>という塩が襲ってくる世界の冒険譚、「鹹賊航路(かんぞくこうろ)」という作品を描いている。

3番目の世界は、<鹵攻>をてなずけて、その力<鹵力(ろりょく)を使って塩の岩礁の世界を作る、<メランジュの目>を持つ民族の話。彼らは大阪湾に塩の岩礁である鹽津城(しおつき)を作った。

というわけなのだが、どうやら、巳衣子の流産した子供が一瀬と百瀬で、二人が描いている漫画は巳衣子の描いた塩絵の内容であり、今後漫画に描かれる世界が、<メランジュの目>を持つ民族の話らしい。

そして、それらのつながりが概ね分かったところで、お話は終わるのである。別にそのつながりが、なにか意味を持つというわけでもなく(もしかしたら持っている?)、実際にはそのつながり自体を書きたかったとしか思えない。

これは全ての短編でそうで、どの話も、複数の世界が幻想などの物語を通して繋がっていることが分かったところで終わっている。描いているのは、まるでネットを通して各サイトが繋がっているインターネット・システムのようでもあり、量子もつれで繋がっている世界システムのようでもある。

まあ、著者の他の作品がどうなっているのか分からないが、どうもこれがこの作家の基本的なスタイルなんじゃないだろうか。不思議な感じと言えば不思議なんだけど、脳みそをつかまれてぐらぐらゆすられるようなところはありません。

旧字体の難しい漢字を使って、不思議な固有名詞を作り出すところはなかなかいいと思いました。わしは日本語にカタカナのルビを振るやり方が苦手なんでね。

★★★☆☆

 

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