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個人投資家目線の読書録

シンギュラリティはより近く 人類がAIと融合するとき

レイ・カーツワイル 訳・高橋則明 NHK出版 2024.11.25
読書日:2025.2.11

2005年に出版した「シンギュラリティは近い」(日本語版は2007年「ポスト・ヒューマン誕生」)で、著者は2029年にAIが人間の知能を越え、2045年に人類がAIと融合して永遠の命を得るという予言をしたが、いまどのあたりまで来たのか、最近のChatGPTなどの大規模言語モデルなどの実例を含んで検証し、改めて従来の主張を繰り返した本。

前著のときには、たぶんほとんどの人はAIがこんなに発展するとは思っても見なかっただろう。しかし今やAIは成長産業で、何10兆円という投資が日常的にニュースになっている。シンギュラリティという言葉もすっかり日常に定着した。2005年当時は未来を見ている一部の人間だけが興奮していた(わしもその一人)が、いまでは世界中が熱狂しているようである。

自然な言葉で会話ができるChatGPTは世界を驚かせたが、実はわしは少々がっかりした。たぶん、期待値が高すぎたからだろう。ChatGPTは今のところ、学習した範囲の内容をうまくまとめる能力しかなく、新しいものを生み出す知能があるとは言えない。いまのAIの限界についてはカーツワイルも十分認識していて、今後は、文脈記憶(アイディアを組み合わせること)、常識(現実世界の理解)、社会的相互作用(心の理論)、が必要だと言っている。いわゆる汎用的なAI(AGI)と呼ばれるものが必要になるわけだ。

AIが人間の理解を越える存在になるには、AI自身が自分を再プログラミングして能力を引き上げるという局面が必要になってくるが、たぶんこれはもっと先になるだろう。自己プログラミングしたAIを実際の社会で試すことは大変危険なので、シミュレーション世界で試すことになるだろうけれど、そのようなシミュレーション環境はまだできていないから。最終的には現実の地球全体をデジタルツインにするくらいの規模が必要になると思うけど、そんなの可能なのかしらね。

AIが人間の能力を越える時期は、カーツワイルは2029年と見ていて、もうあとたった4年後だ。このとき、チューリング・テストを合格するという。すでに特定の能力では人間を超えているから、可能なのかもしれない。

ところで、わしはてっきりシンギュラリティってAIが人間を越えることだと思っていたのだが、そうではなかったことをこの本で思い出した(苦笑)。カーツワイルのいうシンギュラリティは、人間がAIと融合して、不死の存在になるという転換点のことを言っているのだった。それが2045年。

脳とAIの融合はナノマシンで実現するとされていて、こっちの方はどうかなあ、という感じ。いまのところそんなナノマシンができる気配はなさそうだし。ここ10年以内ぐらいになにか基礎的な突破口が開けないと、なかなか難しそう。

ともかく、カーツワイルは技術の発展と人類の幸福について超楽観的で、人類は物質的には十分な量を確保できるという。たとえば食料については、植物は垂直農法(つまりビルの工場で作る農業)で、肉は培養でまかなえるという。わしは、ぜひ、科学的に食料を合成する方法も追求してほしいと思う(誰か試みてくれないかなあ)。

残るもう一つの課題はエネルギーかな。こっちは核融合に期待するしかないんでしょうかねえ。

とりあえず、いまのところは、シンギュラリティに向かって順調に進んでいるということですね。良かった良かった。まあ、前著とほとんど内容は変わらないので、驚きは少ないです(笑)。

わしはシンギュラリティが本当に起きるのか、なんとか生きのびて確認したいです。これだけでも生きていく価値があるよね、たぶん。

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