高岡英夫 講談社 2004.4.2
読書日:2024.12.20
かたい筋肉を「ラフ筋」と呼び、マシュマロのような柔らかい筋肉を「レフ筋」と呼ぶ著者が、レフ筋こそ動ける体であり、レフ筋をつくる筋トレの方法を教える本。
筋トレが流行っているが、何も考えずにやると硬い筋肉ができてしまい、そのような筋肉では運動能力がかえって落ちてしまうのだそうだ。しかも、そのような筋肉では寿命を縮める可能性さえあるという。
まあ、ガチのボディビルダーは筋肉をつくること自体が目的で、動くときの能力なんて関係ないでしょうから余計なお世話なんでしょうが、確かにボディビルダーの筋肉がスポーツに向いているとは言えないでしょう。年末の風物詩であるTBSの「サスケ」を見ていても、筋肉をつけすぎたボディビルダーがいい成績をあげたところは見たことがありません。
なぜ柔らかい筋肉がいいかというと、筋肉は収縮するときに力を発揮しますが、硬い筋肉というのは常にある程度収縮しているから硬いんだそうで、その結果、収縮する量がかえって減ってしまうんだそうです。逆にまったく緊張のないダラーッとしたマシュマロのような筋肉のほうが断然力を発揮するんだそうです。なるほどね。
著者の言うマシュマロのような柔らかい筋肉を持っている例として、プロ野球の大谷翔平やイチローをあげています。著者は別に大谷翔平の知り合いでもなんでもなくて、テレビを見て大谷翔平の筋肉は柔らかいと勝手に断言しているだけなのですが、まあ確かに大谷翔平の筋肉は柔らかそうな気がします。しかも常にリラックスしていて筋肉に緊張感がまったくないと褒めています。
別の例として、陸上の100メートル金メダリストのウサイン・ボルトの例をあげていて、著者はこの走りをトカゲ走法と呼んで、どのように前進力を生んでいるのかを解説した論文を発表しているのだそうです。そのフォームというのが、上げている方の脚の膝の位置が踏ん張っている脚の膝よりも下に来ているという独特のフォームだそうで、これができること自体が筋肉が柔らかい証拠なんだそう。ほんまかいな、と思うのですが、説明図が載せられていて、なかなか説得力があります。
著者はいま75歳だということですが、40歳ではじめたスキーで、トッププレーヤーを置いてきぼりにする実力を発揮したと主張しています。しかし、わしが驚いたのは、歳をとってからさらに身長が2センチ伸びたということ。最近身長が縮んで、まあ歳だから仕方がないね、と諦めていたわしを驚愕させました。
これは腰の周りのインナーマッスルや背骨の筋肉に働きかける筋トレが多くあるので、骨にもいい影響があるからではないかと思われますが、これだけでもやってみる価値があるかも。腰の関節を1個分ずつ持ち上げるという訓練もあります。筋肉を緊張させずに力を抜く訓練なので、筋トレというよりもストレッチの部類になるのかもしれませんが。
動けるからだというのはすべての筋肉の協業だそうで、バランスが取れていないといけないのだそうです。これで思い出すのは、以前読んだ「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った”野生”のスキルをめぐる冒険」に出てきた、自然を駆け回って岩や木にのぼり、川で泳ぎ、森を駆け抜けるような自然をフルに使った特別な訓練が出てくるんだけど(名前は忘れた)、そういうのがいいような気がするなあ。これを街でやるのがパルクールで、パルクールもいいかもしれない。パルクールって動ける身体の筆頭のような気がする。
うれしいのは、最近のサッカー日本代表の身体の動きを褒めていることで、ますます日本サッカーは活躍しそう。
最近、わしのやっている筋トレって、スロースクワット10回、腕立て伏せ5回という、むちゃくちゃ少ないものです(苦笑)。あまりに少なすぎて筋肉が固くなる要素はないし、ダラダラと筋肉を緊張させずに生活することには自信があるんですけど、これじゃあだめ?(笑)
★★★☆☆