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クジラと話す方法

トム・マスティル 訳・杉田真 柏書房 2023.11.10
読書日:2024.5.20

動物の話す言葉を解析する最新の科学を紹介する本。

2015年、カリフォルニアの沖でカヤックに乗っているときに、ザトウクジラのブリーチング(海から飛び出してダイブすること)に巻き込まれ、海に投げ出された著者のマスティルは、クジラに魅せられ、クジラと話してみたいと思うようになる。

このときマスティルは最近の技術進化を体験する。

クジラは多くがデータベースに登録されている。そして今どこにいるのか、目撃情報からたどることもできるのだそうだ。著者を巻き込むブリーチングをしたクジラも、その様子がそばの船にいた乗客のスマホで撮影されていて、その画像からどのクジラか個体識別されたという。おかげで、著者はそのクジラがいまどこにいてどんなふうに移動しているのか追うことができるのだ。マスティルがクジラに親近感が湧くのも理解できる話だ。

なお、このときの動画がSNSにアップされて、著者は世界的に(少なくともクジラ関係者には)有名になったという(笑)。きっとどこに取材に行っても、最初の話題に困らなかっただろう。

こんなことがすぐにできるようになったのもAIの発達のおかげである。AIの画像認識がこのようなことを可能にしたのだ。

そんなAIの進化が進んでいるのが言語の分野だ。最近のAIは音声を聞き取ったり、それを文字起こししたり、中身を理解して要約したり、翻訳したりということが自在にできるようになっている。このようなAIを動物の言語に活用すればどのようなことが分かるだろうか。このようなAIは言語に関するルールなどを教えなくても、膨大なデータから自分でその言語に関するルールを見つけ出すことができる。

クジラは歌うことで有名で、その多彩な歌声はすでに膨大な数が集まっている。かつては録音自体が難しく、なんとか録音したクジラの音声を専門家がじっくり聴き込んで解析を試みるということが行われてきた。しかし、いまではデータが集まりすぎて、専門家がそれを聞く時間がないのである。このような膨大なデータをAIに食わせれば、AIは何かの言語的パターンを発見するのだろうか。

その答えはまだ出ていないが、展開は有望そうである。少なくとも「名詞」があるのは確実だろう。もう動物が話をしない、などと考えることは不可能になりつつある。問題はどのくらいの表現ができるのか、という部分に絞られつつある。その確定には多くの関門があるが、遠からず一定の成果があるのではないか。

かつて動物の言語機能を調べるときには、動物に人間の言葉を教えるということで行われてきた。動物は話すことができないから、手話やパネルを使うなどの方法で調べられてきた。しかし、そのような研究では、意味の読み取りに恣意的な部分もあり、再現性実験も困難である。しかしいまや直接動物の言語を解析できる時代になったのだ。

なお、クジラが水中で歌うときには、息を吐き出すのではなくて、身体の中で空気を移動させて音を出しているのだそうだ。まあ、そうじゃないと水中で音を出せないよね。

(参考)NHKサイエンスZEROで放送された、シジュウカラの言語の話。

www.nhk.jp

★★★★☆

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