ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体

石井暁 講談社 2018.10.16
読書日:2024.5.13

自衛隊の中に首相も防衛大臣もその存在を知らない、旧日本陸軍の流れを継いだ情報部隊「別班」の存在を世の中に知らしめた著者による、取材の経緯を書いた本。

ほとんどの人は別班のことは、テレビドラマ「Vivant(ヴィヴァン)」で知ったのではないか。わしもそうで、てっきりフィクションと思っていたけど、本当に存在しているとは。

共同通信の記者である著者は、2013年にこのことを記事にして、その記事は全国の新聞の一面を飾ったのだそうだ。当時は自衛隊の「特定秘密保護法」の国会審議中で、審議に一石投じる思いで記事にしたのだが、いろいろ調整しているうちに、法案が可決したあとになってしまったのだそうだ。

わしは、この記事のことはまったく記憶にない。きっとスルーしてしまったんだろう。

軍に情報機関があるのはべつに珍しくないが、どの国もシビリアンコントロールがしっかりしていて、軍が独走することはありえない。しかし、別班は首相も防衛大臣もその存在すら知らされず、自衛隊の中でもトップの幕僚長すら詳細は知らないのだ。幕僚長が知らないのは、最初から知らないほうがいろいろいいからである。なんのコントロールもなしに、動き回っている情報組織があるというのは、とてつもなくまずい状況である。

これが秘密になっているのは、自衛隊に許されていない海外での活動になるからだ。別班の活動は中国、韓国、ロシアなどで、現地にダミー会社を作って、表向きは自衛隊を辞めて、他の省庁の公務員という身分で赴いているという。いちおう公務員の身分を持っているのは、隊員の身を守るためだそうだ。しかし、民間人として行く場合もあるようだ。(身分偽装に協力している省庁の人はなにも知らないのだろうか? どういうルートなんだ?)。別班の人事については、防衛省の特定の人だけが関わっているという。

情報収集は昔ながらの人間を使ったヒューミント(human intelligenceの略)で、現地の人を使って、情報収集を行っているらしい。予算は潤沢で、しかも請求書は要求されないので、高級な食事のし放題なんだそうだ。こうして集めた情報は、他の情報と一緒にされて、別班の情報とは分からないように提供されるという。

海外での特殊部隊による作戦では事前の情報収集が絶対に必要で、今後は特殊作戦と別班との統合が進んでいきそうだ。実際に人事交流が行われているという。しかし、こちらの方はまだ道半ばという状況らしい。

別班の隊員は自衛隊の学校を首席で卒業したものしかなれない。しかも厳格な適性試験をくぐり抜けなければならない。ドラマVivantで試験の様子が描かれているが、まったくあの通りで、すれ違った人の細かい特徴を述べさせられたりするという。1日中、ぼんやり過ごしているようなわしにはとても務まらないのは間違いない。そして、どんな場合でも自然な笑顔が作れるようになり、外面からは本心がまったくうかがい知れなくなるそうだ。(これではおそらく家庭もうまくいかないのではないか)。

こんな秘密の情報組織のことが外国に知れたらどうなるんだと思うが、これがどうにもならないのである。なぜなら、別班は米軍と協力関係にあるからだ。ある意味、米軍のお墨付きなのである。文句が出るはずがない。

石井さんが別班ことを記事にしたとき、知り合いの自衛隊の上層部の人は、石井さんの心配をして、秘密裏に護衛を付けてくれたんだそうだ。本当に命がけである。

というわけなのだが、こんなふうに秘密で内容がうかがい知れないから不気味なだけで、実はそんなに大した組織ではないのかも知れない。まあ、それはそれで困ったことではあるけれど。

★★★★☆

にほんブログ村 投資ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ