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個人投資家目線の読書録

量子コンピュータ 超並列計算のからくり

竹内繁樹 講談社 20052.20
読書日:2024.4.23

量子コンピュータの計算の仕組みを解説した本。

量子力学関係の話って人間の普通の感覚に反する現象が起きるから、一度分かったつもりになってもすぐにまた分からなくなる。それでまた本を読むことになる。

わしは最近、量子コンピュータについて考えていて、分からなくなった。

量子コンピュータは複数の状態が重ね合わせで同時に存在できるから、超並列で一度にいろいろな状態について計算できるという。それはいいとして、その重ね合わせの状態を測定するとそのうちのひとつの状態しか測定できず、その他の可能性のある状態は測定した瞬間に消えてしまう。そうすると一度の計算で答えが得られるのは1つだけだから、他の状態を得るためには、また何度も計算しなくてはならず、結局、普通のコンピュータと変わりないということになってしまわないか?

でもそんなはずはないので、いったいどんなふうになっているんだろうと量子コンピュータの本を読んでみようと思った。それで、どの本を読もうかとアマゾンで検索して、わしの疑問にちょうどよい本としてこの本に出会ったわけだが、そのときアマゾンは重要な情報をわしに教えてくれた。

なんと! わしは過去2回、この本を買っていたのである。

1回ならまだしも2回買ってるって、どういうこと?

わしは紙の本が嫌いで、電子書籍派だが、どうやら当時はまだ紙の本しかなかったので、わしは紙の本を買ったのだ。そして分かったと思ってその本を捨てたのだろう。(わしは紙の本がじゃまだと思っているので、読んだら捨てる派(笑))。そして、どうやらまた分からなくなってもう一度買ったらしい。

うーん。いまでは完全に図書館利用に移行しているのだが、当時は気になった本はどんどん買っていたのですね。当然、買うのはポチッとするだけだからどんどん買えるんだけど、読みが進まず、読んでいない本がどんどん溜まっていった。そして溜まった本に閉口していたのだ。

これがわしが図書館派に移行した理由でもある。そして、返却期日が決まっていると、なんとかそれまでに読もうとするから、結局、読書量は増えた。そして家の中にある本は、借りている分に限られるから増えない。いい事だらけだったのだ。

というわけで、3回目の今回は買わずに、図書館を利用いたしました(笑)。そして知りたいことが書いてあるのは30ページほどだったので、そこだけ読みました。

結局のところ、わしの疑問の答えはこうである。量子コンピュータの特性を活かせるように、アルゴリズムを工夫しているのである。

量子コンピュータもコンピュータであるから、0か1の2進数で計算している。ただしこの2つの状態の重なった状態として計算しているわけだが、各波動関数が0だろうが1だろうがどっちでも成り立つようにアルゴリズムを組んでいるのだ。

具体的には、ある論理計算を設定する。そしてそれが真か偽かだけを判断させる。そしてその真偽の判断は各波動関数が0でも1でも成り立つようなものを選択するのだ。

でも、それって特殊な場合しか成り立たない、と思うかもしれない。そのとおりで、そういう特殊な場合しか量子コンピュータは有効ではないのである。しかし、そういう場合は確かにあるから、その場合に限っては量子コンピュータは普通のコンピュータよりも高速に計算できる。

この本では最初にそれが確認できた「ドイツェ-ジョサの量子アルゴリズム」について説明している。このアルゴリズムで判定するのは、0,1でできたある数列が、均等か(全部0か、もしくは1)、それとも均一か(0の数と1の数が同じ)ということである。当然、はじめからこの2つのうちのどちらかだと分かっている数列にしか使えない。だから、そうとう特殊なものである。でも、ともかく、判定結果は出る。それがどんなに大きな数字でも一瞬で。

これがブレークスルーになった。多分現在ではいろんなアルゴリズムが開発されているだろう。なにしろ、この本が発売されてから20年近く経っているのだから。

そしてこのような特殊な場合以外では、普通のコンピュータを使ったほうが高速である。だから、量子コンピュータとは、普通のコンピュータとのハイブリッドで運用する、という使い方になる。

よく言われる、インターネットの暗号解読に使われている、大規模な数字の素因数分解の問題も、素因数分解アルゴリズムのごく一部だけに量子コンピュータを使う。このときの使い方は、重なった波動関数の絶対値の測定である。各波動関数の状態は気にせずに全体の絶対値のみを計測する。絶対値なら各波動関数の係数の2乗を足し合わせるだけだから、絶対値だけなら0,1のどっちの状態でも同じだからだ(たぶん)。

だから量子コンピュータの2つめの使い方としては、状態は気にせずに絶対値だけを計測するということである。

というわけで、疑問が解消されましたので、この本は速やかに返却いたしました。やっぱり図書館が便利。分からなくなったらまた借りればいい。

この本はけっこう昔の本だから、最近の量子コンピュータアルゴリズムの進展が気になってきたなあ。調べてみようかしら。

★★★★☆

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