ティム・フェリス 訳・川島睦保 東洋経済新報社 2022.10.20
読書日:2023.5.13
巨神のツール、知性編、健康編についで第1巻目の富編。3分冊されて発行されたこのシリーズを逆の順番で読んでいくことになったが、カタログ集のようなものだから特に問題はない。
富編ではやっぱりあのアーノルド・シュワルツネッガーが注目を集めるな。シュワルツネッガーが資産を不動産に投資していて大金持ちだということは知っていたが、てっきり映画俳優として成功して稼いだお金を投資しているんだと思っていた。でも違った。オーストリの片田舎からカリフォルニアに来たあと、レンガ職人をしたんだけど、そのお金をどんどん不動産に投資して、俳優で成功する前にすでに100万長者になっていた。米国に来てたった10年で。
これが一体どんな効果を生んだかというと、彼はやっぱり役者として成功したかったんだけど、もう十分な資産を持っていたので、自分にぴったりな役が来るまでいくらでも待てたってこと。オーディションもいろいろ受けていたけど、身体が大きくてドイツ語訛りの役者に合う役はほとんどないから、落ちまくりだった。だけど、まったく焦る必要はなかったってわけだ。そして「コナン・ザ・グレート」で成功すると、最初から彼に合った役が作られるようになった。
これ、これですよ。
なにかしたいことがあって、成功するのが難しい分野なら、まずある程度の資産をためてから実行することをお勧めするな。それは決して遠回りではない可能性が高い。えっ? そもそも資産を蓄えるのが難しい? まあ、確かに。それにアスリートのように若い身体を持っていないと難しい場合もあるから、いつでも可能ってわけではないけど、でも多くの場合に成り立つ話じゃないかな。わしは特にFIRE(経済的に独立して仕事を早く辞めること)する人にぜひこれを実行してほしい。FIREすることが最終目的であってはいけないでしょう。
クリス・サッカの話も面白い。
彼は会社に努めていた頃、呼ばれていなくても会社で行われているどの会議にも自由に参加したんだそうだ。コツとしては、なんであなたがここにいるのか分からないという顔をしても、ノートを開いてかまわずメモをとる。そして会社の資料を読み漁るんだそうだ。そうやってレベルの高い会議に参加して、会社にとって何が重要なのかを素早く学んだという。グーグルに入ったときもそうしてたんだそうで、すぐに会議になくてはならないじんざいになったんだそうだ。もちろん、組織のしっかりした会社では無理で、組織のゆるいスタートアップ前提の話になってしまうんだけど。スタートアップに努めているのなら、すぐに実行しよう。
CD babyというインディペンデント・ミュージシャンのためにCDを販売するサイトを作った、デレク・シヴァーズの話も面白い。彼は街にあったCDショップに行って、どんなふうにインディペンデント用の商売をやっているのか聞いた。すると、「CDには好きな値段をつけて。1枚売れると4ドル引いて毎週払うから」と言われて、そのままのルールでCD babyを立ち上げたんだそうだ。たった5分のリサーチだったわけだ。
デレク・シヴァーズはともかくなんでもシンプルに考える人らしくて、自分のビジネスもどんどんシンプルにしていったらしい。会社が大きくなって、他の人から「お忙しいとは思いますが……」と言われると、「ぜんぜん忙しくありません」と答えているんだそうだ。他の人がなぜ彼のように成功しないのかというと、普通の人はいろんなことをしすぎるからだそうだ。1つのことをやってうまくいきそうなら他のこともする、というふうにシンプルにしないとうまく行かないだそうだ。忙しがっている人は、要注意。
マット・マレンウィックの体型維持方法も、すごい。なんと寝る前に1回の腕立て伏せ、なんだそうだ。それだけ敷居が低いと、やらない、なんて言えない。ともかく始める敷居を低くして、続けることが重要なんだそうだ。続けること自体が何かを生むってことは結構あるからねえ。
この本は富編ということになっているんだけど、この本では単純にお金や資産を富とは呼んでいない。お金だけを稼いでも豊かとは言えないからだ。とくに時間を自由にするゆとりを持ち平穏な心を持つこと、創造的であることを富と呼んでいる。なので、たとえお金儲けのチャンスを逃しても、ノーと言うことが大切だったりする。
そして、相変わらず、人々がすすめる本が興味深いので、読まなくてはいけないリストが山盛りになってしまうんだな、これが。嬉しい悲鳴ですけど。
★★★★☆