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習得への情熱 ーチェスから武術へー 上達するための、僕の意識的学習法

ジョッシュ・ウェイツキン 訳・吉田俊太郎 みすず書房 2015.8.18
読書日:2023.4.20

ボビー・フィッシャーを探して」という映画のモデルになったチェスの世界的選手のジョッシュ・ウェイツキンが、20代に太極拳にはまって太極拳の武術、推手でチャンピオンになったときに学んだことを、チェス競技と比べて述べた本。

これは超おすすめ。

チェスもほぼスポーツと言っていいくらいの競技で、ジョッシュがはまったのも、武闘とチェスがものすごくよく似ているから。頂点のレベルになると、勝負のときにいかにリラックスして、フローの状態になるかでほぼ勝負が決まってしまう。それで、どんなふうに精神状態を持っていくかという話が中心になる。

上達するための学習方法もよく似ていて、いちばん簡単な状態から徐々に複雑な状態を会得していくとか(エンド・ゲームから始める、と言っている)。例えばチェスのばあい、キングといくつかの少ないコマだけのバリエーションを徹底的にマスターする。これって当たり前のように思えるけど、なかなかその簡単な状態から始める人は少ないんだそうだ。簡単な状態を繰り返し訓練すると、複雑な状況になっても、応用が効くのだという。このような訓練をしていないような普通の人に対しては、混沌とした状況をわざと作り出すと、混乱して簡単に勝てるのだという。

こういうのをエンド・ゲームを飽きずにするというのもすごい。太極拳を学び始めたときも、基本的な動きを何時間も飽きずに続けている。まあ、この辺のハマったときの集中力というのは個人差があるんだろうけど、わしにはそういう集中力はないなあ(苦笑)。

リラックスをする重要性はチェスの大会のときから認識していて、ずっと緊張しているような選手はだいたいダメなんだそうだ。いい選手は大会中の適当なところでリラックスをするすべを心得ている。中には本当に熟睡してしまう人もいるんだとか。ジョッシュの場合も自己流でいろいろ工夫している。ダッシュを繰り返して汗だくになると、試合の緊張をリセットできるとか、そんな工夫をしている。

しかし、結局たどり着いたのは、リラックスする方法を何かの決まった行動や物と結びつけることだという。つまりはプロのスポーツ選手がよく言うルーティンである。このようにすると、実際にそれをしなくても思い浮かべるだけでもリラックスできるようになるという。究極的には深呼吸1回でリラックスできるんだそうだ。

リラックスといえば瞑想だ。瞑想のメリットとして、心を今という瞬間に置くことの利点をあげている。心を今に置くと今この瞬間が生き生きと感じられるんだそうだ。だから、トップアスリートだけではなくて普通の人にもメリットが大きいのだという。ジョッシュによれば、完全にリラックスして、心をいまという時間に置く訓練をすると、平凡な毎日が、驚くほど生き生きと感じるんだそうだ。平凡な時間や人生などこの世界には存在しないのだそうだ。

なるほど。いいかもしれない。

この本はアメリカ人よりもまじめな日本人の心に響くような気がするなあ。

★★★★★

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