ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う

サイモン・シネック 訳・栗木さつき 日本経済新聞社 2012.1.24
読書日:2023.4.17

どうやるか(HOW)、何をやるか(WHAT)の前に、自分の存在意義はなにか(WHY)から始めたほうがうまくいくと主張する本。

というのは、うまくいかなかったときにWHYがしっかりしていれば、HOWやWHATを柔軟に切り替えることが可能だからだ。もしもWHATから始めて、たとえば時計を作る会社と自分を定義すると、会社は時計から離れられなくなってしまう。そうなると、例えば時計産業が落ち込むとそこから脱出するのは難しくなる。

WHYがしっかりしていると、HOWやWHATのやっていることに一貫性が生じる。すると、そのWHYに共感する客を掴むことができる。そのような客はその商品が良いからというよりも、自分はこういう人間だということを示すためにその商品を買うことになる。そして、その意義に共感している場合は、顧客はその企業をなかなか見捨てない。もちろん、その企業が自分たちのWHYを忘れない限りは、だが。

この本で何度も取り上げられるのは、アップルとサウスウエスト航空だ。

アップルは個人を解放する、という自分たちの大義がしっかりしている。コンピューター事業を始めたのも、個人の力を増して大企業と同じことができるようにするためだ。もちろん、企業のための大型コンピューターなどは作らない。それどころか、IBMに喧嘩を売るようなCMを作る。

そして、アップルはこの存在意義に対応したどんな商品を作ることも問題ない。だから、iPodやiTuneの音楽事業を行うことも、iPhoneのようなスマートフォンを作っても問題ないし、むしろそれこそ勧められる。

従業員を雇うときも会社の大義に合っているかどうかで選ぶという。このような会社の大義に共感している従業員は何よりの宝だから、サウスウエスト航空では最も大切なのは顧客ではなく、従業員なのだそうだ。自分たちの会社に合わない顧客というものは必ず存在する。そのような顧客に無理に合わせることはなく、会社の大義に共感している従業員の方を優先するのだ。

もちろん、後継者には創業者の意義をしっかり受け継いだ人がならないと、いつしかその企業は存在意義を失って、消えてしまう。

HOWやWHATから始めても成功する場合はもちろんある。だが、その場合、成功してもその創業者が自分の存在意義を感じられないのだという。まるで亡霊のように生きて、著者のセミナーに参加しては、涙を流して自分たちの悩みを訴えるのだそうだ。

だから、WHYは別に企業だけでなく、個人にとっても大切だという。

わしは2013年4月12日のクローズアップ現代を思い出した。この日のテーマは「FIRE(経済的自立と早期退職)」を目指す人達の話だったが、それを達成して元気いっぱいに暮らしている人もいれば、自由を手に入れたものの何をしていいか分からずに悩んでいる人もいた。まあ、何をするにしても、なぜそれをするのかというWHYの部分をしっかりしないとうまくいかないということなのだろう。

わしはアップルの理念に深く共感するところであるが、アップル製品は1つも持っていない。というのは、垂直統合よりも水平分散を好むという性質をわしは持っているからだ。むしろ垂直統合は毛嫌いするほうなので、アップルという会社は好きだけれど、自分の会社の製品ですべてをまとめようとするアップルは、個人的には受け入れられないのである。アップルを買う人は、著者のシネックが言う通り、ある意味カルトに入信しているようなものなのだ。入信者の皆さんは、自分の自由を制限していると思わないのだろうか? (まったく同じ理由で、昔はソニー製品もまったく買わなかった。いまソニーはそれほど垂直統合にこだわってないので、ソニー製品も買ってる。この両社は似てるよね)。

★★★★☆

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