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個人投資家目線の読書録

巨神のツール 俺の生存戦略 知性編

ティム・フェリス 2022.10.20 東洋経済新報社
読書日:2023.3.11

週4時間だけ働く」のティム・フェリスが、ポッドキャストで著名人にインタビューした内容をまとめた本(を3分冊にした1冊)。

どうやら週4時間だけ働くと、仕事以外にいろいろな活動ができる時間を捻出できるらしい。有名人になった著者は、新たに作った人間関係を駆使していろんな分野の106人にインタビューを行い、それを本にハック集としてまとめた。ひとり数ページだが、全部で500ページ以上になってしまい、日本では3分冊にされてしまった。

内容からして、どんな順序で読んでも問題なさそうなので、順序をつけずに図書館に予約したら予約が少なかった3冊めの知性編が一番最初に届いた。もしかしたら、1、2冊目を読んだ人が、もういいや、と思って3冊めの予約をあまりしなかったのかもしれない(笑)。が、まあ、やっぱり、どこから読んでも同じだったので、問題ない。

インタビューの傾向としては、ビジネス的に特異な人もいるけれど、映画や作家、コメディアンといったクリエイター関係が多い。

その中でも面白いのは、やっぱり映画監督ロバート・ロドリゲスの話だろう。ティムもよほど感心したのか、ロドリゲスにはなんと18ページも費やしている。

ロドリゲスが映画を作ろうとしたときに、まず自分が持っているもののリストを作ったのだそうだ。友達が農場やバーを持っていたからそこを舞台にすることにして、いとこがバス会社を経営していたからバスのアクションシーンを入れることにして、知り合いのペットの犬やカメがいたからそれらを使ったシーンを撮ったのだという。こうしてたった7000ドルで作った映画だったが、7万ドルの制作費だと言いふらした。この映画「エル・マリアッチ」は試作品のつもりだったが、サンダンス映画祭で観客賞を受賞してコロンビア・ピクチャーズに売れてしまう。

その後もロドリゲスは、いま自分が持っている資産を有効活用して、映画を取り続けている。たぶん条件が限定されているからこそ、創造性で乗り越えようとするのだろう。その創造性こそが映画に必要なもので、その他の条件はどうでもいいことなのかもしれない。もしかしたらロドリゲスはいまあるおもちゃで遊んでいるだけの子供なのかもしれない。

ビジネス関係者で異彩を放っているのは、あのピーター・ティール(「ゼロ・トゥ・ワン」)の投資会社ティール・キャピタルのマネージング・ディレクター、エリック・ワンスタインかな。さすがにピーター・ティールの関係者らしい発想だ。

エリック・ワンスタインの発想にあるのは多数派への疑問あるいは嫌悪といったものだ。一般受けしなくてもいい、2000〜3000人の人に受ければそれでいい、という言葉にそれが現れている。(ただし、その2000〜3000人は、力を持った有力者なんだけど)。

多数派にならないためにやっている習慣が面白い。エリック・ワンスタインはすぐに新語を作ってしまうんだそうだ。TELEDULTERYとは、一緒に見ようと約束していたTVシリーズを、相手が勝手に見てしまうことなんだそうだ。なぜこんなことをするのかと思うけど、言葉が思考の限界を決めてしまうので、自分で限界を広げているのだ。

他にも言葉を使った、人前で話すのをはばかれるような言葉の配列を考えて、あえて唱えることで精神を普通でない別のモードに入らせるのだという。この言葉は秘密だが、唱えるのに7秒かかるのだという。

他にも、40歳を越えたら幻覚剤を使ったほうがいいとか、ちょっと危ない発想が異彩を放っている。(幻覚剤は、他にも勧めている人がいるけど、ほとんどの人がやっているのは瞑想だそうだ。)

アメリカらしく、軍人がリーダーとして認識されていて、何人か紹介されている。そのなかでも面白いのは、米海軍特殊部隊ネイビー・シールズのジョコ・ウィリンクだろうか。ジョコは部下が困ってしまって、相談に行くと、必ず「いいね」と言うんだそうだ。なにかうまく行っていないことから、何かしら新しい良いことが生まれるからなんだそうだ。なるほど、いいね。ネイビー・シールズ関連では、「急がない、休まない」の項目で、「スローはスムーズ、スムーズはスピーディ」なんていう有意義な言葉も紹介されている。あと、どこに書いてあったのか忘れたが、命令が下ったときに、ゆっくりと着実に準備をすると恐怖心を克服できるって書いてあった気がするなあ。

ほかに特異な人の中では、チェスの神童だったのに柔術の黒帯を取ったジョシュ・ウェイツキンの話も興味深い。結局、彼は物事に素早く習熟するための方法を極めた人らしい。エンド・ゲームから始めるとか、水平思考を勧めるゴー・アラウンドとかいう言葉をとか。彼の著書、「習得への情熱」はぜひ読まなくては。

まあ、ともかく、この本を読むと、さらにたくさんの紹介されている本を読みたくなり、映画を見たくなること間違いなしなのだ。

相変わらずティム・フェリスという人は、一ヶ所に留まらることができず、いろんな所に出かけているようで、この本は最終的にはフランスでまとめられたようだ。ふーん。

富編、健康編も届くのが楽しみ。

★★★★☆

 

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