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ランディ・コミサー あるバーチャルCEOからの手紙

ランディ・コミサー 訳・石川学 ダイヤモンド社 2001.1.12
読書日:2023.1.3

スタートアップのCEOを助ける役割を自分の天職と考えるランディ・コミサーが、起業の目標を設定するときには、単に利益を出すことだけを考えるといった小さくまとまるのではなく、自分の情熱を傾けられるような大きな目標を設定しなければいけないと主張する本。

この本は若き起業家がランディに自分の事業プランをプレゼンする(ピッチというらしい)が、ランディがそれではだめだ、もっと大きく考え、自分の情熱を傾けられるようにするのだ、と起業家をメールなどで教育していく過程を、小説の形で書いたものだ。そのお話の合間にランディの実際の体験が語られている。

この本が書かれた時代はちょうど最初のドットコム・バブルの時代だ。なので若き起業家レニーによる架空の投資案件は、よくあるeコマースの起業の話が語られている。具体的には葬儀に使う用具一式を売るサイトを作るというものだ。レニーは、葬儀関係のものを売るサイトは存在していないから、早いものがちで、いま立ち上げれば莫大な先行者利益を得られると説明する。

しかし、ランディは、よくある「良速安(better-faster-cheaper)」の案件だとして興味を示さない。そして、なぜこのような案件にベンチャー投資家が興味を示さないか、説明する。

ベンチャー投資とは10個に1つか2つしか成功しない。しかし、その1個が何100倍にもなるので、報われるわけだ。そうすると、大きくなる可能性が高いものを選ぼうとするが、単に良速安の案件だと、ライバル企業もすぐに追いつけるし、その先の展開も大きくなるイメージが湧かないので、敬遠される。

やり取りをしているうちに、実際にはレニーは父親の死を経験して、このような状態の家族を精神的にサポートするようなサイトがあればと思って起業を決意したことが分かる。

ランディが、なぜそれをしないのかと聞くと、最初は会社を回るようにするためにお金を稼がないといけないからだ、お金が稼げるようになったらするつもりだと答える。しかし、ランディは、本当にやりたいことをあとに回すというのは最悪の選択だと断言する。最初からそれを盛り込んでおかないと、永久にそれを実行する機会は訪れないのだ、と。

もう一つの理由は、会社を経営していると、何度も崖っぷちに立たされる。そのときにやりたくもない稼ぎのためにあくせくしていると、心が折れてしまうのだ。心が折れないためには、情熱の力が必要だという。情熱だけが自分を支えてくれる。

それにどうせ失敗する確率は高いのだから、やりたいことをやって失敗したほうが、学びが得られるから、そうすべきだという。

そして、自分が本当にやりたいことを中核にすると、それこそが他社にない特徴となり、参入障壁を設けることになるという。

いやはや、ここに書かれていることは、「大きく考えることの魔術」で語られていることそのままですね。自分のやりたいことをストレートに実行すること。人生はだいたいそれでうまく行くようです。

★★★☆☆

 

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