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京都生まれの和風韓国人が40年間、徹底比較したから書けた!そっか、日本と韓国って、そういう国だったのか。―文化・アイドル・政治・経済・歴史・美容の最新グローバル日韓教養書

ムーギー・キム 東洋経済新報社 2022.7.14
読書日:2022.12.23

グローバル・エリート・ビジネスマンで在日3世のムーギー・キムが、日本と韓国の関係をその根本から真剣に考えた本。

ムーギー・キムってもう40代なんだそうだ。いまでは起業家として香港に住んでいるらしい。で、ムーギーの本ってこれまで何冊か読んだはずなんだけど、これまで感想をここでアップしたことがないね。あれま(笑)。

これまでのムーギーの本って少しおちゃらけた感じもあったけど、この本は極めて真面目に取り組んでいる。在日韓国人の彼にとって、自分の存在意義をかけたテーマになるのだから当然だろう。

細かい文化の違いについて書いたところもあるのだが、やはり歴史の認識の仕方について、どうして韓国と日本でこれだけ違うのか述べたところが、この本では最も重要なところだろう。

ムーギーによれば、韓国人は歴史をさかのぼって「真相究明」ということをしつこくやる人たちで、王様をあとから廃位したり、復帰させたりというということをしょっちゅうやっているという。

これはやっぱり儒教の影響なんだそうだ。儒教では過去が最も道徳的に素晴らしいとする学問で、過去にさかのぼって正統性が認められたほうが道徳的に正しい。そして道徳的に正しいことを究極的に証明するものというのが、相手の謝罪なんだそうだ。こういうメンタリティなので、韓国ではやたらと相手に謝罪を求めるのだという。

だからこの謝罪の要求は、何も日本に対してだけでなく、韓国内でもお互いにやりあっており、それは身近な家族間であっても同じなのだそうだ。ムーギーの妻は韓国人で、しかもあまり韓国人ぽくないそうだが、それでもなにかあると謝罪を求めてくるという。そしてその謝罪は形だけのものではなくて、心からの謝罪を求めるのだという。

心からの謝罪とは何かというと、私はこういうところが悪かったと、言語にして説明することで、そうしないと納得しないのだそうだ。日本に何度も謝罪を求めるのは、この辺の心からの謝罪という点で、韓国人の基準に達していないからなのだそうだ。

というわけで、道徳的な正統性を何よりも重視する風土なので、対立する勢力間で妥協はほぼ不可能なんだそうだ。なんか、とてもとても面倒くさい国だなあ、とつくづく思う。

一方の日本は白黒をはっきりつけず、すべてを水に流して忘れる文化なのだという。とくに、死んでしまったあとは、それ以上責任を追求しようとはしない。日本人は現実的で、過去にこだわらないのだという。なぜなら、死んだらどんな人間も天国に行くからなのだという。最も典型的なのは武士道で、切腹して責任を取ると許される。

一方で、日本が失敗を恐れ減点主義になるのは、失敗すると切腹もので、本当に命がけになってしまうからで、ヨーロッパのように、神に告白して失敗を認めればドンマイとなるような文化だったら良かったのに、とムーギーは言っている。

歴史認識に関しては、例えば従軍慰安婦問題では、ムーギーは自分なりに双方の言い分を検討しているが、日本側の反論は弱いと見ているようだ。一部の例外を全体に広げるような反論のしかたで説得力がないという。

こんなふうに違いばかりが目立ってしまうが、両者は遺伝的にもほぼ同じであるとし、おそらくZ世代ではもっと交流が活発になり、両国の関係も変わるのではないか、というのがムーギーの願いである。まあ、韓国にしろ中国にしろ、これら隣国が無くなることはありえないので、単に嫌っているだけではなんにもならないことは確かではある。

わしが韓国に強い不信感を持ったのは、例の日本海でのレーザー照射事件で、こんなことをする国はいざというときにとても一緒に戦えない、と思ったのが発端なので、この事件にムーギーが何も触れていないのがちょっと残念だった。

ところで、じつはこの本で一番ビックリしたのは、豊臣秀吉の朝鮮征伐で民間人を含めた数十万人が犠牲になって耳と鼻を削がれたという話です。これは16世紀では世界的にも圧倒的な犠牲の数だったそうだ。特に南原(ナムウォン)城の戦いが老若男女の大虐殺で悲惨だったそうだ。これは全く知りませんでした。

そりゃあ、これは、朝鮮にはさぞかし大ショックだったでしょう。まさか日本に攻撃されるとは思ってなかったでしょうし。今も韓国ドラマの時代劇に出てくるし、民族のトラウマになったことは十分理解できます。きっと明治時代に日本が武力で海外に出たとき、朝鮮の人たちの脳裏には戦国時代の記憶がまざまざと蘇ったことでしょう。

一方で、日本の方では、大虐殺を反省するわけでもなく(日本はそのころ戦国時代なんだから、戦争することに反省するはずがないけど)、かといって自慢に思っているわけでもなく、単に歴史の彼方に忘れ去られている、というのがすごいなあ、と思いました。ほぼ日本の社会にはなんのインパクトもなかったというところがねえ。まあ、外国で起きた話ですし、日本的には豊臣から徳川のほうに勢力が移ったという内政への影響のほうがきっと重要なんですね。

★★★☆☆

 

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