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防衛大学校 知られざる学びの舎の実像

國分良成(第9代防衛大学校長) 中央公論社 2022.8.10
読書日:2022.12.1

日本唯一の士官学校防衛大学校第9代校長の國分が、大好きになった防衛大学校を語りつくす本。

中国の拡張主義や北朝鮮のミサイル、そしてウクライナ戦争以降、日本でも防衛というものが真剣に語られるようになってきたような気がする。そのほとんどは予算や武器の話になってしまうが、人材の方はどうなっているのだろうか。でも、それは大丈夫かもしれない。世界トップ10に入る士官学校防衛大学校があるのだから。

士官学校のランキングってどんな基準でやっているのかは知らないが、ともあれトップ10に入っているのは本当らしいし、2021年3月まで校長だった國分良成は本気で世界トップの士官学校になることを目指していたのだそうだ。

でも、そもそも防衛大学校は大学ではないんだそうだ。大学とは文部科学省所管の学校のことで、防衛省所管の防衛大学校は大学を名乗れない。「大学校」という名称には規定がないため、文部科学省以外の省庁の学校は大学校を名乗るっているんだそうだ。

防衛大学校は大学ではないから、学位を授ける権限がない。それではいろいろ困るので、学位授与機構という役所を1991年に作り、学位授与機構が審査の上、学位を授与する仕組みを作ったという。なんとそれまでは、防大を出た人の最終学歴は、高卒だったということになる。

まあ、制度的な話はいろいろあるんだろうけど、わしの興味はやっぱり防大生の日常生活にある。日々、どんなふうに暮らしているんだろうか。なにしろ、他国の士官学校と同じように、防大は全生徒が寄宿生活を送ることになっているのだ。

それは、4つの大隊に別れているんだそうだ。それぞれ大隊ごとに学生舎(寄宿寮)がある。そして大学校内の競争はこの大隊単位で行われるのだ。これって、まるでイギリスの有名な例のファンタジー小説に出てくる魔法学校みたいだね。それも当然で、防大のモデルはイギリスのパブリック・スクールなんだそうだ。

学生は8人ごとの共同生活で、8人は1学年から4学年まで、さらには留学生も一緒に共同で生活する。女子も同じ学生舎の片隅で生活している。なんでも、女子だけだとけっこうきついので、この方がいいという話もあるというが、いま5棟目の学生舎を作っているのだそうで、それが女子寮になるのかしら?

で、学生の生活はびっくりするくらいびっしり詰まっていて、ほとんど自由時間がない感じだ。

朝は6時にラッパで起床。5分で着替えて学生舎前に整列、点呼を済ませて乾布摩擦を行う。清掃、朝食を済ませて、8時半から授業。12時から1時間の昼食の後、課業行進という行進で教場(教室のある建物)まで行進して、17時15分まで授業がある。その後、校友会という部活動が18時30分まであり、この校友会には全員がどこかに所属することが求められる。

17時30分から19時30分までが入浴と食事。そして19時45分から22時15分までが自習時間。この時間が唯一の自由時間ということになるでしょうか。そして22時30分に消灯。

うーん。本当に自由時間がない。卒業生で学生時代にもっとやっておけばよかったというのが、英語と読書なんだそうだ。こんなに時間がびっしりだと読書をする時間もないんじゃないの、って思う。

ちなみに、学生の食事は一日3400キロカロリーだそうで、予算は千円以下だそうだ。普通の成人としては多めだけど、防大生にとっては足らないらしい。学内のコンビニの売上はおかげで地区で一番なんだそうだ。

ともかくこんなふうに4年間一緒に暮らす防大生の縦と横の繋がりは大変なものらしい。慶応大学も卒業生の繋がりが濃いことが知られているが、その慶應出身の國分良成が、慶應に負けず劣らずと言っているのだから、相当なものなんだろう。

1年間の行事も盛りだくさんだし、海外への留学や派遣もあるらしいから、忙しい。

さらに留学生だ。世界中から留学生を受け入れていて、特にアジアの各国軍の中心部には防大出身者が多いということだ。国を越えた横のネットワークも良いようだ。

まあ、卒業後、任官拒否する人もいるようだけど、それはともかくとして、防大出身者の皆さんには立派な人格者になっていただきたいと心から願うものです。

この本では、初代校長の槇智雄のことがくわしく書かれてある。防大の校風、ひいては戦後自衛隊の精神はこの人が打ち立てたものらしい。第8〜10期生の学生が槇の教えを3つの言葉にまとめた。「廉恥」「真勇」「礼節」だそうだ。なるほどねえ。

ちょうど防衛大学校に興味が出てきた頃にこの本が出版されたので、非常にタイムリーなことでした。防衛大で教えている防衛学ってどんな内容なのか興味があるので、こんどはそっちの方の本を読んでみようかしら。教えている内容は秘密らしいけど、たぶん、手に入るでしょう。

★★★★☆

 

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