小田嶋隆 ミシマ社 2022.8.30
読書日:2022.10.20
2022年6月24日に亡くなったコラムニスト小田嶋隆の遺稿コラム集。
小田嶋隆が亡くなる直前、ミシマ社社長の三島邦弘さんに遺稿集を頼んだのだそうだ。その結果できたこの本は、日経ビジネスオンラインの「ア・ピース・オブ・警句」に最近載ったものをまとめたものだ。「ア・ピース・オブ・警句」は、最後の方は有料コンテンツになってしまったので、わしは読んでいなかったから、まあ、良かったとも言える。
しかし、その時その時の話題に対応して書かれたコラムを読むと、コラムって寿命が短いなあ、と言う気がする。コラムってやっぱり、今回はどの話題をどんな切り口で語ってくれるのだろう、という興味がほとんどで、話題がちょっと古くなるとそれだけでコラムの価値も下がってしまうようだ。
そういう意味では、もしかしたら小田島隆の本よりも、岡康道の本の方が生き残るのかもしれない。岡康道はビジネス書も小説も書いているから。
しかし、読んでいなかった文章の中で、へーと意外に思ったこともある。小田嶋の維新の会に対する否定的な見解だ。当時、維新の会は大阪都構想を掲げ、住民投票を実施に移していた。
では維新の会のなにが問題なのか。
小田嶋は維新の会の「既得権益」に対する闇雲な敵意が問題だという。「既得権益」というのは、すでに得られている権益のすべてを指す。そして「既得権益」という言葉には「不当に手に入れられたものだ」というニュアンスが含まれているのだという。つまり維新の会はすべての権益は破棄されるべきだと言っている。
これはあまりに乱暴なプロパガンダであり、これは改革の名を借りた「一揆、打ちこわし」以外の何物でもない、という。
小田嶋は住民投票に、大阪商人の知恵が反映されることを期待している。
大阪商人は話をいつもニコニコと聞いてくれるが、最後には「またにしとくわ」といって断るのが常だという。今回も、大阪都構想は「またにしとくわ」と言って先延ばしにするのが、大阪の知恵だというのだ。
なるほど、なぜか説得力がある。もちろん、このあと大阪都構想は、小田嶋のいうとおり「またにしとくわ」と先延ばしにされたことをわしらは知っている。なるほどねえ。
ああ、残念だなあ。こういうコラムがずっと続いてくれたなら。もっともお金は払わないんだけど(苦笑)。
★★★☆☆