世界的に半導体が供給不足で、政府なんかもあわててTSMCなんかを日本に誘致しており、日本に半導体産業を復活させるための議論があちこちで展開されていますが、まあほぼ無理だろうな、という気がします。
こういう状況を思い浮かべてください。
半導体不足だから半導体業界に仕事がありそうだと思った若い技術者が、そう言えば親戚にいまは引退しているけどかつて半導体製造技術者だった人がいたっけ、と思いだして話を聞きに行くとします。そして「半導体業界に行こうと思いますがどうでしょうか」と聞くと、十中八九、そのベテランは「やめとけ」と言うでしょう。
なぜでしょうか?
1980年代に世界の半導体生産の半分を占め、「電子立国日本」と呼ばれた日本の半導体産業ですが、1990年代〜2000年代に過酷なリストラを行い、大勢の半導体技術者が、まるでゴミのように捨てられたのです。
このような扱いをうけたかつての技術者が、若者に半導体に人生をかけることを推奨するでしょうか?
グローバルな競争に負けたと言えばそのとおりですが、しかし日本ではそのような例が多すぎます。(液晶、OLED、パソコン、etc.)
IT関係でも、ITの技術者はけっしていい扱いを受けてきませんでした。どちらかと言うと、給料が低い日本の中でさらに低いほうなんじゃないでしょうか? 最近でこそ需要が多いのでマシな扱いになっていると思いますが、それでも扱いがあまりいいような気がしません。
エンジニアだけではありません。基礎研究を行う科学者、研究者の人たちの待遇も劣悪です。
エンジニア、研究者を大切にしない国に技術立国は無理でしょ? ものすごく単純な話です。
まあ、エンジニア、研究者たちが自分で会社を起こして、自分たちの力で待遇をアップさせるという努力があまりなかったのも事実ですが。
どちらにせよ、基本、日本はエンジニアを取り替えの利く道具扱いにして大切にしない国だと思います。
わしはもともとこういう産業論的な大きな戦略の話は日本という国には向いていないんじゃないかって気がするんですよね。なにかの産業を牛耳るというよりは、大きな産業の一部の欠かせない部分を小さく取る、そんなやり方のほうが合ってるんじゃないかと思います。いわゆるニッチトップですね。
だから企業は、国の政策とかあまり見ないほうがいいんじゃないでしょうか。