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個人投資家目線の読書録

サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット

モーガン・ハウセル 訳・児島修 ダイヤモンド社 2021.12.7
読書日:2022.3.22

一生お金に困らずに暮らすというのは、収入が多いことではなく、何か不測な事態が起きても困らないように余裕がある状態を保つことであり、そのためにはなんの目的がなくても倹約と貯金を行うことで経済的なゆとりを持ち、心の自由を得ることがもっとも大切で、さらにその余分なお金を時間をかけて投資すれば複利効果で、大きな富を築くことも可能だと説く本。

まあ、こういう話は、この本だけではなくネットのコラムなんかでもファイナンシャルプランナーが口を酸っぱくして(死語?)書いていることだけれども、この本はそれでも面白かった。このへんが現代の人気コラムニストたる所以なのだろう。現代人の感覚にピッタリの、進化心理学や行動心理学の例えやお話を持ってきて、なかなかいい感じだ。とくに投資したときに、一部のロングテールの銘柄がほとんどの富を生み出すとか、株価の変動を示すボラティリティの高さはテーマパークの入場料みたいなもの、などというところが気に入った。

この本で繰り返し著者が唱えているのは、本当の富とは何かということだ。それは収入が多くて、お金をたくさん使うことではない。何かあったときに使える余分な資産を持っていることなのだ。

何かあった時というのは、不意の病気や事故、会社からリストラされたときのような自分でどうしようもないことが起きたときだけではない。もっと大事なのは、なにか自分でしたくないことがあったとき、それをしなくてもいいという選択肢を持っていることだ。例えば会社から自分のやりたくない仕事をするように言われたときに、十分な資産を持っていればいつでもノーと言える。実際にノーと言うかどうかはともかく、ノーと言える自由を持っていれば気持ちに余裕ができ、慌てずに冷静に対処できるだろう。それが富の効果だ。

そのために必要な資産の額は人によりちがう。自分にとって必要な額を試算して、それを貯めるように努力するしかない。そして複利で運用してなるべく増やすようにする、と。まあ、そんな事が書いてある。

でも、安心できる資産というのはどのくらいだろう。自分一人なら、わしは非常に少ない生活費で楽しく暮らせる自信がある。だから、そんなに富は必要ないだろう。

でも、これは家族がいなければ、だ。家族がいると必要な金額が何倍にも、下手をすれば一桁以上上がる。なにしろ、子供の教育費を考えるだけでも、大変な額ですからのう。妻が気に入っているマンションのローンや管理費や固定資産税もあるし。

そういうわけで、家族、親戚、友人など、考慮に入れる人の範囲をどんどん広げると、バッファーとして築かなくてはいけない富は大変な量になり、どんなに資産を持っていても余裕をもっていられないかもしれない。

…ということを一瞬考えたのだが、しかし、まあ、これは杞憂でありましょう。誰だって、自分の資産を使わせてもいい範囲は明確でしょうからね。(つまり自分と家族のみでしょう。家族が入らない人も多いかも(笑))。

そういえば、著者は家を買うときに、全額現金で払ったのだそうだ。普通のファイナンシャルプランナーなら、なるべく借金して浮いたお金で投資するようにと言うだろうが、あえて自分が安心できる金銭感覚でそうしたという。

えーっ? 日本のファイナンシャルプランナーだったらこんなアドバイスするかなあ、借金を増やして投資しろだなんて。逆に、投資はあくまで余裕資金でといって控えさせて、頭金を増やし、月々の返済額を減らすように指南するのでは?

この辺が日米の違いかもしれない。

もっともここで述べたように、わしは自分の判断で、あえて借金を増やして投資をしましたけどね。結果的に、お金が増えてよかった(笑)。

★★★★☆

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