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「ジャック・アタリの未来予測」で描かれたウクライナ危機

2017年出版の「2030年 ジャック・アタリの未来予測 不確実な世の中をサバイブせよ」では2030年までに起こり得るさまざまなリスクを列挙しています。

このなかには、例えば未知のウイルスによるパンデミックのリスクについても記載されており、コロナ禍の予測が実現して、わしをびっくりさせました。

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この本では、世界大戦にいたる可能性のあるリスクについても記載しており(全部で6つ)、そのなかにロシアとNATOウクライナで激突して世界大戦にいたる危機についても詳述されています。これまたなんともビックリじゃないですか?

つまり今回のウクライナ侵攻の危機はすでに世界の知性には認識されていたわけです。というか、まあ、わしも含めてほとんどの人にとっては、ロシアがこういうことをするかもしれないとは思っていたけど本当にするとは思わなかった、ということなんじゃないかと思いますが(笑)。

では、ジャック・アタリが語っていたウクライナ危機について、その背景、予測された展開について見ていきましょう。

まず戦争にいたる背景です。

アタリによると、ロシアは人口が減り、高齢化していきます。さらにイスラム系の人口が10パーセント以上になり、極東では中国系の人口が多数派になります。こうして、昔からのロシア人は人数的に追いつめられています。さらに地球温暖化によりシベリアが肥沃な大地に変化し、シベリア管理をめぐってロシアは中国と衝突するといいます。

つまりアタリが予測する戦争の背景には、ロシアの人口動態、地球の気候変動あるというのです。

こうしてロシアの人たちは追いつめられ、周囲を敵に囲まれていると感じており、その包囲網を突破しようと戦争を仕掛けます。アタリは戦争が起こる場所を、ずばりウクライナだと見ていました。

2014年に併合したクリミアは電力をウクライナに依存しています。そこでロシアはクリミアとウクライナの東部地域を再占領します。もちろんアメリカとヨーロッパはウクライナに武器を供与するとともに、ウクライナNATO加盟を検討します。

これを開戦事由(開戦を正当化する理由)として、ロシアはアメリカに先制攻撃を行うといいます。

さらにロシアはカリーニングラードの飛び地状態を解消しようとしてバルト三国を3日間で占領しますが、エストニアサイバー攻撃を行うなどバルト三国が反撃に出ると、NATOが介入し、世界大戦にいたるといいます。

どうでしょうか。アタリはかなり正確に発端と展開を読んでいます。

アタリの予測のうち、現状はロシアがウクライナに侵攻し、西側が武器の供与を行うところまできています。これを世界大戦にしないためには、(1)ロシアに西側への先制攻撃(核攻撃?)をさせないこと、(2)バルト三国へ危機を広げないこと、が必要だということになります。

しかし、ロシアがウクライナで苦戦すれば核を使いかねませんし、一方、ウクライナ占領と属国化を実現すれば、次はバルト三国を侵略するでしょうし、世界大戦へいたる道はかなり大きく開かれている状態です。

そして、アタリが主張するシベリアの管理をめぐる中国との衝突はまだ起きていません。すると、たとえ今回のウクライナ危機をなんとかうまく収めることができても、中国と衝突するという危機がまた戦争を引き起こす可能性があるわけで、ロシア周辺はずっと不安定なままになる可能性が高いということになります。

まあ、ロシアの国境は歴史上ずっと不安定でしたから、昔に戻っただけかもしれませんが。ともかく世界史は19世紀に逆戻りです。この状態を脱するには、アタリが主張するように、世界連邦を本気で考えなくてはいけないのかもしれません。

 

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