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SWIFTからの追放は中国に効果があるのか?

ロシアのウクライナへの侵攻は、予想以上に西側諸国の結束が高く、ついにロシアの銀行をSWIFTから締め出すことに成功しました。しかし、これがどのくらいの効果があるのでしょうか。そして何より気になる、中国に台湾への侵攻を思い止まらせる効果があるのでしょうか。

(1)SWIFTからロシアを完全排除することはできななかった

西側はSWIFTからロシアの銀行を排除することを決定したのですが、ズベルバンクとガスプログバンクを除外しました。これはヨーロッパがガスや石油の代金を支払うために残したものです。つまり、いまもヨーロッパはガスの輸入をしており、代金の支払いをしているわけです。

ヨーロッパが、将来的にはともかく、いま全面的にエネルギー輸入をロシアから他へ移すことは不可能なので、仕方ないのです。つまり、いくら決済手段を排除しようと思っても、必要なものなら取引を継続するということです。SWIFTから排除と言ってもできるのはここまで、ということです。

SWIFTの限界がわかったところで、仮に中国が台湾に侵攻したとき、西側がSWIFTから中国の銀行を排除するとどうなるでしょうか。そもそも排除は可能なんでしょうか。

きっとそれは世界が中国からどうしても手に入れなくてはいけないものがあるかどうかにかかっています。

(2)中国がSWIFTから排除されたとき困るのはどちらか

中国からの輸入で困るものといえば、すぐにレアアースが思い浮かびますが、レアアースは国家備蓄の対象ですし、大量に必要というわけでもないので、十分な備蓄があれば乗り切れると思います。

その他のものは、消費財などが主でしょうから、これらはなくても我慢できます。

いっぽう、中国はエネルギーと食料を輸入しています。いまは大半をドルで決済していますから、これらの決済ができないということになると大変に困るでしょう。ですから西側よりも中国のほうが困るはずです。

すると、SWIFTからの中国排除は成功するのでしょうか。

(3)CIPSとロシアとパイプライン

しかし、エネルギーも食料もロシアなら提供できます。しかもドルでなく、元の支払いで。

ヨーロッパは今後エネルギーと食料のロシア依存を減らすでしょうから、ロシアは中国にそれらの輸出を振り向けたいと思っているでしょう。一方、中国も安全保障を考えればロシアから買いたいと思うでしょう。

なにより、中国はCIPSという独自の決済手段で、元で買うことができるのです。きっとロシアは元での支払いを受け付けるでしょう。

ただし、いまのところ、エネルギーをロシアから中国に大量に運ぶ手段がありません。パイプラインはガスの1本だけです。また石油はタンカーで運んでいます。

この問題は、ガス、石油のパイプラインを作れば解決します。どのくらいの期間でできるかわかりませんが、中国なら数年で建設可能なんじゃないでしょうか。どちらの国も、なんら環境アセスメントなどのよけいな労力はかからないでしょうから、スピード感を持って対応可能でしょう。

食料は鉄道やトラックで輸送可能ですから問題ないでしょう。

(4)パイプラインができたとき、台湾侵攻の準備が整う

そうすると、例えば3年後ぐらい先にこれらのパイプラインが完成すると、中国はSWIFTから排除されてもエネルギーと食料の不安がない状態になり、台湾への侵攻が可能となります。

今回のウクライナ侵攻では、アメリカは第3次世界対戦を起こしたくないという理由で、ロシアと戦わないと言っています。そうだとすると、中国とも同じ理由できっと戦争はしたがらないでしょう。

もともとアメリカの戦略は、戦争するというよりも、マラッカ海峡を押さえて、中国へのエネルギーの輸入を妨害することが中心になります。しかしロシアとのパイプラインができれば、中国はその戦略を無効化できます。

そういうわけで、パイプラインができれば、西側には経済制裁中国の台湾侵攻を止めるすべはないのです。おそらく台湾侵攻は2025年以降に現実味を帯びるのではないかと思います。まあ、パイプラインがなくても侵攻はするかもしれませんが、パイプラインができれば、とても危険ということです。

(5)ウクライナ戦争で達成しなくてはいけないこと

今回のウクライナ戦争では、たんにロシアがウクライナ侵攻に失敗するだけではだめで、ロシアの権威主義的な今のプーチン政権を倒壊させて民主主義の国を作るくらいの勢いがなければ、(少なくとも日本にとっては)失敗ということになります。つまり中国に協力しない西側に友好的な政府をロシアに作るということが理想的なゴールになります。

しかし、プーチン政権が倒れることはあり得るかもしれませんが、ロシアの民主国家化は非常に高いハードルであり、困難…というか、ロシアのこれまでの歴史を考えればおそらく無理でしょう。

このままいけば、最悪のケースを考えておかなくてはいけません。残念ですが、台湾を諦めて世界は中国と手打ちする、という可能性はかなり高いと思います。

当面は、今回のウクライナ戦争のあとに、中国とロシアの間で何が起きるのか注意してみておかなくてはいけないでしょう。とくにパイプラインの建設があるかどうかです。

 

以上が、わしが現時点で懸念していることです。予想が外れて、いい方に想定外なことが起きればいいのですが。それにしても困難な時代ですねえ。日本政府が賢明であることを祈るばかりです。

 

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