ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

日本人が知らない軍事学の常識

兵頭二十八 草思社 2012.3.26
読書日:2022.1.10

押井守が愛読している人らしいので、とりあえず良さげなものを選んでみた。2012年の出版と10年前であり情報は古いが、しかしそこに書かれていることが正しかったかどうかを判断するにはちょうどいいかも。

とりあえず読んだ印象としては面白かった。そして、ためになるような記述も多かった。このひと、使えるかも。なんか軍事評論家ってちょっと眉にツバをつけて見てしまうような部分はわしにもあるが、偏見だったかもしれない。

面白かった部分は、主に米軍の裏事情についていろいろ書いてあるところ。たとえば、沖縄の普天間基地問題だが、なぜ普天間ぐらいの大きさの基地を広大な米軍基地内の別のところに作れないのか、そこに移設すればいいじゃん、と誰もが思うところだが、これがなぜできないのかについて書かれてあって、仰天した。

嘉手納基地なんかは空軍の基地であり、普天間基地海兵隊の管理なんだそうだ。そして空軍は米軍のなかでエリート集団であり、空軍の人たち、とくにその妻子の人たちは粗野な海兵隊と一緒に暮らすことは不可能として拒否するからなんだそうだ。これが普天間がわざわざ辺野古に移設しなければいけない理由だそうだ。(これって常識?)

なんてことでしょう。日本は米軍内の対立のため、基地を併合して縮小することもできないんですねえ。いや、知らなかった。沖縄の空軍基地の生活はすばらしいらしく、嘉手納に行くというと、家族は喜ぶのだそうだ。

空軍は飛行機を飛ばすことに誇りを持っているパイロットの集まりだから、その誇りゆえに、なんか非常に使いにくいらしい。それでCIAなんかが困ってしまって、無人機(ドローン)の導入を進めて、いまではCIAは空軍の協力が必要ないくらいの充実ぶりらしい。陸軍もドローンの導入を進めて、人間が乗ることにこだわった空軍は出遅れてしまった。あわててドローン導入をしたがすでに手遅れで、ドローンをつかった作戦の中心はCIAと陸軍になっているとのことだ。

気になる対中国の戦略だが、2012年の10年前の段階では中国に勝ち目はないということになっている。どうすればいいかと言うと、中国は石油を輸入に頼っているので、マラッカ海峡を押さえてしまえば、中国は手も足も出ないんだそうだ。そして潜水艦で港に機雷を敷設すれば、中国はなにもできない。これはつまり海軍だけで事足りることを示していて、空軍も海兵隊もいまその存在意義を問われているのだそうだ。

なるほどねえ。これでは中国がミャンマーに必死に鉄道をつなごうとしているのも分かるね。いまでも、たぶんこの基本戦略は変わっていないでしょう。中国が去年(2021年)、石炭を輸入できなくて電力不足に陥った事例が思い浮かぶね。

で、韓国が本当に戦争をしたがっているのは日本だとか、日本の軍事については薩長のころから説き起こしていて、という感じです。兵頭さんは基本的に靖国神社の参拝には反対で、外国のように無名戦士の墓を作るべきだとしています。

なかなか面白かったので、最近の本も読んでみようかな。きっとアップデートされた内容が書かれているんじゃないでしょうか。

★★★★☆

 

にほんブログ村 投資ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ