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つながり過ぎた世界の先に

マルクス・ガブリエル インタビュー・大野和基 訳・高田亜樹 PHP新書 2021.3.30
読書日:2021.12.9

哲学者マルクス・ガブリエルがコロナ後に資本主義は倫理資本主義に向かうと主張する本。

資本主義は倫理を取り入れなければならないということをいろんな所で聞いた。しかし、わしは冗談だろうと思っていた。なにしろお金儲けの資本主義で倫理の適用なんてできるものだろうか、と。これまでさんざん、資本主義は搾取をしてきたのではないか?

しかし、わしはこの本を読んで、ようやく確信できた。今後、資本主義は倫理資本主義に向かう、と。

しかし倫理とはなんだろうか。どう定義すればいいのか。ここで哲学者の出番なのだ。

マルクス・ガブリエルによると、倫理とはいつでもどこでも、人種や国や宗教によらずに正しいと言えるもの、なんだそうだ。すなわち、

――人間として、他の人間にしてはいけないこと。

これが倫理だ。

なんともシンプルで素晴らしい。この定義なら、世界中で通用しそうだ。中国でも、表立っては反論できないだろう。(自分たちは倫理的だとは言うかもしれないが)。

歴史を振り返ってみると、資本主義がものの考え方を変えたことはこれまでもあった。たとえば私有財産がそれだ。自分のものであれば、それをどのように取り扱っても、売り払ってもよいもの、それが私有財産だ。そしてそれは個人の自由を表しているから、ここに民主主義と国民国家が誕生したのだ。

そういうことであれば、資本主義が倫理化すると、それは国境を越えたルールとなり、国民国家を越えて、世界をまとめる可能性があるのではないだろうか。

グローバル経済は、資本主義の活動範囲と国の法治の範囲が合わなくなって、問題を起こしている(参照)。しかし資本主義が倫理化すれば、資本主義が世界をいい方向でまとめる可能性がある。少なくとも、国単位の政治力でまとめるよりは早そうだ。

こうして国の運営も、国際的な外交も、国防も、環境も、それぞれの国家の違いを許したまま、倫理を中心にまとめることができるかもしれない。もしもそれができれば、わしらははっきりした判断基準ができ、迷うことは減るのではないか。

いまどこの国でも世界中で受け入れられているシステムは、資本主義だけだ。これに代わる世界システムはない。そして、その資本主義が倫理化するなら、世界中が倫理化するということだ。

マルクス・ガブリエルはコロナは世界の倫理化を進めたという。賛成だ。この方向は正しい。コロナ禍を経て、わしらは新しいビジョンを得たのだ。

――倫理資本主義。

これでいこう。

★★★★★

 

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