ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

BUTTER(バター)

柚木麻子 新潮文庫 2020.2.1
読書日:2021.11.30

(ネタバレ注意)

梶井真奈子(カジマナ)は男をたぶらかして次々に殺した容疑で収監中だが、痩せていなくてむしろ太っており、美しくもないのに、男が夢中になることが世間の女性たちを苛立たせ、注目を集めていた。週刊秀明の記者、町田里佳は、おいしいものに目がないカジマナに料理のレシピをダシに、他社にさきがけて接触に成功する。グルメでもなく料理もしたこともない里佳に、カジマナはかつて自分が食べて美味しかったものを里佳も食べて、それを報告するように命じる。思い込んだらエキセントリックな行動に出てしまう親友の主婦、伶子とともにカジマナに関わっているうちに、里佳は太っていくのだった……。

この本は「ナイルパーチの女子会」を勧めてくれた同じ同僚が勧めてくれたもの。

ナイルパーチのときも思ったが、柚木麻子さんのお話には女性しか出てこない。もちろん男性も出てくるけど、ほぼ背景のなかに沈んでしまっていて、必要なときだけひょこっと顔を出すような感じ。だいたいどの家庭でも、父親の存在が異常に薄い、か、もしくはトラウマの対象だ。里佳の両親は別れてしまい、里佳は自分が父親を殺したんじゃないかとトラウマになってる。

で、登場する女子は女子校出身者が多く、高学歴で一流企業に勤めているような女子が多い。そういう女性同士が永遠のポジション取りをやっているような印象。にもかかわらず、というか、それだからか、友達が少ない。そして女子の友達がまったくいなくてその状況に憧れている人物(ここではカジマナ)がいるのはナイルパーチと同じだ。

ちなみに里佳は女子校では王子様の立場だったそうだ。ボーイッシュということで、彼女は中性というよりも、半分男の役割なんだろう。カジマナに取り込まれた男は皆死ぬこの物語では、死にかける彼女は、最後の男ということなのかもしれない。

物語ではよく終盤で死を意識するような出来事があり、それで心が決まり、乗り越えられるという展開になることが多い。この物語でも、里佳は実際に死にかけて、マスコミにしぶとく残る決意が固まり、一人前になる。そして、カジマナにはできなかった七面鳥を焼いて知り合いを呼んで食するという行為でカジマナを超えるのだ。

ナイルパーチでも太っているかどうかが結構重要だったが、この物語でもしょっちゅう里佳の体重の話が、自分からも彼女の周りからもされる。だが、最大で太ったときで彼女のBMIは21で標準だ(身長166センチ、体重59キロ)。これで激太りと言われちゃうのか。太る前のBMIは17.7。病気レベルなんじゃないの、これ。きびしいなあ、日本女子の現状。

どちらも家族に欠陥を抱え、女子高出身の里佳と伶子。似ているような似ていないような二人の友情の物語、カジマナを間に添えて。

お腹が空いたら、ご飯にバター醤油か、塩バターラーメンのバターましましでどうぞ。

★★★★☆

 

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