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LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義

吉森保 日経BP 2020.12.21
読書日:2021.10.6

科学的思考が大切と力説する著者が、科学的思考を全開して自ら関わってきた細胞のオートファジーを軸に生命科学について語る本。

この本の前に読んだ「動物意識の誕生」があまりに歯ごたえがありすぎたせいか、こういう一般向けの本を読むとほっとするが、今度は歯ごたえが足りなくてちょっと不満という、まことに贅沢な話。生命系の本が続いたのは、単なる図書館の予約本が届くタイミングの関係で、なんの意図もないです。

さて、最初に強調するのは科学とは仮説の集まりで、仮説を立てて限りなく真実に近づこうという学問だけど、あくまでも仮説であって真実ではないという話がされます。わしはここに同じことを書いたけれど、こういう話は子供のときに聞かせてほしかったな。高校時代ずいぶんと悩んだので。

それで科学の最強の武器は「相関」と「因果」だといい、この2つを混同しないようにすることが大切といいます。相関があったからといって因果関係が証明されたわけじゃないけど、やっぱり相関というのは非常に強力なツールだといいます。相関があれば、因果関係の仮説を立てて、確認することができます。

そして科学が信頼性が高いのは、論文には査読という制度があり、また重要な実験は多くの検証が他の研究機関で行われるので、結局正しいものが残りやすいということです。論文が採用されてもそれが間違っていることはよくあるといいます。なのでまちがっても誰も怒らないとか(そりゃそうだ)。

わしにとってはその後の細胞の話はちょっと退屈だったが、面白くなるのはやっぱりオートファジーの話が始まる最後の3分の1ぐらい。

オートファジーが細胞を若返らせる働きがあるとか、細胞の中に入った病原体を分解してしまう、つまり細胞内の免疫みたいなことをしているとか、しかしオートファジーを実行するオートファゴソームは、病原体を認識して攻撃しているわけではないとか(細胞の中に入るときに包まれる膜を破ることを検知するんだそうだ)、ヒトが老化するのは進化の結果だとか、老化にはオートファジーを止めるルビコンというタンパク質が増えて起こるとか、ルビコンを抑えることができればオートファジーを活性化して死ぬまで健康になれるかもだとか、そういうところが面白かった。

ヒトの老化は他の生物よりも早く激しいんだそうだ。そして動物の中で、若さが価値を持つのはヒトだけなんだそうだ。(他の動物は死ぬまで子供を作れ、年寄りのほうがモテるという)。ヒトは早く子供を生んで早く死ぬように設定されているらしい。

で、ルビコンを抑える薬はまだ先の話なので、いまでもできる老化対策は、カロリー制限とかおなじみのメニューが並んでいる。なんかもう、ともかく食べちゃいけないらしい。

ところで、オートファジーノーベル賞をとった大隈良典先生には、二人の弟子がいて、ひとりは本書の吉森保さんでもうひとりは東京大学教授の水島昇さんだそうで、まるで大隈先生が水戸黄門で、吉森さんと水島さんが助さん格さんみたいだ、と言われているそうだ。

なんでこんなことを書くかというと、会社の同僚に「水島昇はわたしの親戚です」という人がいたのを思い出したから…ってそれだけなんですけどね。大隈先生がノーベル賞をとったときにあちこちのTV出て、親戚のあつまりでからかわれたとか、そんな話を聞いた。なんの意味もない話ですみません。せっかくだから水島昇さんの本も読んでみるかな。

吉森先生は、62歳でベンチャーを起こしたそうだ。つまり自分の研究成果を自分の手で世に広めようというのだ。うーむ。

★★★☆☆

 

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